平和宣言 初めて米を名指し批判
長崎総合科学大助教授(政治学)の芝野由和(52)は、米国の単独行動主義は“外圧”によって続行不能になる日が来ると推測する。
「欧州諸国は既に警戒感をあらわにしている。米国内でも世論の強硬さは一時ほどではなくなった。勝手放題を続けるのは、いかに米国でも難しい」。だが、気になるのは日本だという。
「外務省と防衛庁は米軍との共同行動の範囲をどこまで拡大できるか、に自らの存在をかけている感さえある。日本がこのまま米国に同調していたら『核を使う側』に参加してしまう。また、その一員として世界に認識されかねない。被爆地が政府にどう迫るか、が問われている」と主張する。
八月九日の平和祈念式典で長崎市長が読み上げる「長崎平和宣言」。それを検討する六月二十九日の起草委員会で事務局が示した文案には、強硬な核政策を続ける米国への名指し批判が初めて盛り込まれた。
委員たちはこれを支持。さらに、非核三原則の法制化を政府に求める記述には「(政府首脳による見直し発言があった)今年の場合、もっと政府を追及していい」と事務局案をより強めるよう迫る意見もあった。
事務局案段階では、委員から苦言や異論が出ることが多い起草委員会だが、今年は中心的論点に対する市と委員の認識は一致している。
委員の一人で、「ヒロシマ・ナガサキ反核平和使節団」の一員として四月に訪米した被爆者、下平作江(67)。下平は委員会で、反テロの世論が覆う米国を見た体験を紹介したが、「少なくとも市民は、説明すれば核の恐ろしさを分かってくれる。実相を伝える大切さを実感した」と話した。
同じく委員を務める元長崎大学長の土山秀夫(77)は、米批判について「米国すべてを敵に回すことではない。はっきり言えば相手はブッシュ政権だ。『米国』ではなく『米国政府』といった表現が適切では」と提案した。
ミサイル防衛計画の推進や地下核爆発実験再開の可能性など、米国をめぐり緊急に懸念される課題は多い。被爆国である日本政府がその歯止めとなれていない状況にあって、被爆地長崎の責務は重い。こうした中、今年もまた、長崎の反核、平和の思いが一つになる五十七回目の「長崎原爆の日」が巡ってくる。(敬称略)