核軍縮の危機
 =米国へ届け長崎の声= 7

県と長崎市の回避要請を無視し長崎に入港した米イージス艦カーティス・ウィルバー。イージスシステムはミサイル防衛の海上迎撃分野を担うとみられる=6月6日、長崎市の松が枝岸壁

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核軍縮の危機 =米国へ届け長崎の声= 7 日本政府 際限なき対米配慮

2002/07/01 掲載

核軍縮の危機
 =米国へ届け長崎の声= 7

県と長崎市の回避要請を無視し長崎に入港した米イージス艦カーティス・ウィルバー。イージスシステムはミサイル防衛の海上迎撃分野を担うとみられる=6月6日、長崎市の松が枝岸壁

日本政府 際限なき対米配慮

官房長官、福田康夫の「非核三原則見直し」発言を受けて焦点となったのは、核兵器を「持たず」の将来だった。長崎の被爆者は「被爆者の苦しみと被爆国の使命を忘れ、核武装に走るつもりか」と猛反発、多くの団体が抗議声明を出した。

長崎総合科学大助教授(政治学)の芝野由和(52)は「本気で核武装を考える政治家もいるが、米国の利益と衝突するから今は少数だろう。一方で、周辺事態法やテロ対策特措法などの対米協力法の延長で、あの発言を考えると関連が見える」と言う。「非核三原則をあいまいにすることは『核は特別なものではない』『米国が核を使うこともある』といった戦争への慣れも促す。禁句の敷居をどんどん下げようとしている」と指摘する。

米国に配慮する日本の姿勢は、常に被爆地の不信感を買ってきた。

一昨年の国連総会で、日本は「包括的核実験禁止条約(CTBT)の二〇〇三年までの発効」を求めた核廃絶決議案を出し採択された。だが、昨年は「核軍縮をめぐる環境の悪化」を理由に〇三年目標を削った決議案を提出。揚げ句CTBTを否定する米国には反対に回られ、「世界の失笑を買った」(長崎平和研究所長だった故鎌田定夫)。

日本は戦域ミサイル防衛(TMD)を米国と共同研究中だが、米国は従来の米本土ミサイル防衛(NMD)とTMDの区別をなくし、統合した概念を打ち出した。「TMD研究」との整合性は今も、はっきりしない。

インド、パキスタンの一九九八年の核実験以来、両国に課してきた経済制裁は「テロとの戦いの支援」を名目に解除。米大統領ブッシュの「悪の枢軸」発言にも、首相の小泉純一郎は二月の日米首脳会談で「理解」を示した。

元長崎大学長の土山秀夫(77)は「日本はミサイル防衛から今すぐ手を引け」と繰り返す。

「米国の勝手な政策変更に付き合う必要はない。概念の統合で日本は、より長距離のミサイル迎撃システムに引きずり込まれる。当然、集団的自衛権を認めていない憲法に触れる。それでなくとも周辺国を不必要に刺激する。莫大(ばくだい)な費用がかかる。第一、百パーセント迎撃できるミサイル開発は技術的に不可能。遅れたら抜けられなくなる。研究段階の今しかない」(敬称略)