爆発実験 再開されたら徹底抗議
先月末から、長崎市役所には「悪い知らせ」が相次いだ。米国は三十一日、核起爆装置のプルトニウム・ピットの製造再開を表明。インドとパキスタンの間の軍事的緊張も伝えられ、核使用が現実味を帯びて心配された。今月六日には、県と市の回避要請を無視し米イージス艦カーティス・ウィルバーが長崎に入港した。
臨界前核実験も七日強行された。長崎市長の伊藤一長は記者会見で「十分あり得る」と米国が地下核爆発実験を再開する恐れにも触れた。米国は爆発実験を約十年停止しているが、包括的核実験禁止条約(CTBT)を否定した今、何の障害もない。
東京国際大教授の前田哲男(62)も「臨界前実験で核兵器の信頼性の実証はできる。だが新タイプの核兵器開発は、爆発実験を繰り返さなければならないといわれる。今の米国は、必要と思えば実行する」と危ぐする。
核実験に抗議する長崎市民の会は十六日、平和公園で通算三百七十七回目の座り込みをした。もし爆発実験が再開されたら―。同会世話人の山川剛(65)は「徹夜で座り込むぐらいの抗議をする」と米国をにらむ一方、「被爆国である日本政府が米国に毅然(きぜん)と立ち向かうことができるかにも注目している」と話す。
イージス艦入港に先立つ五月二十三日、伊藤一長は外務省にいた。
伊藤は入港回避を要望した後、非核三原則の裏で日本政府が核搭載艦の寄港を米国に認めていたとされる「核密約」報道に触れた。
非核三原則の「持ち込ませず」の建前を過去に戻って崩壊させる核密約疑惑の存在は長年、地方を悩ませてきた。
対抗策として、神戸市は入港希望艦船に非核証明を求める「非核神戸方式」を編み出した。実現していないが、高知県は港湾非核化の条例を作ろうとした。北海道でも同様の条例制定を求める市民運動が続いている。
伊藤によると、応対した同省審議官は、核密約について「歴代総理が国会答弁で否定してきている」と答えた。伊藤は「(その見解を)文書でもらえないか」と食い下がったが、審議官は「答弁は議事録で残っており、議事録は公文書です」とかわした。政府首脳の「非核三原則見直し」発言が飛び出したのは、このわずか一週間後だった。(敬称略)