加害責任の直視 世界との連帯に不可欠
「過去を振り返ることが大切だと思った。碑が持つ意味をすごく考えさせられた」
親善交流のため、八月二十七日訪れたオランダ・アムステルフェーン市にある、第二次世界大戦中、日本占領下のインドネシアで犠牲となった人々を慰霊した「インディ・モニュメント(インド記念碑)」。高校生平和大使の一人、能木絵美(大村高二年)はその碑が発するメッセージに、強い衝撃を受けた。
多くの日本人が在住し、昨年の日蘭交流四百周年を記念して市内に「出島通り」と名付けた道路を建設するなど親日的な同市。M・H・カンプハウス市長や市民らは、平和大使一行を歓迎、市長自ら同記念碑に案内した。
記念碑は高さ約二メートルの円筒を、中心で縦に二つに割ったような形。左側の円筒内面に、人々の姿の浮き彫りと鏡がある。右側には多くの立像が突き出ている。互いに向き合うように作られ、左側は過去を、右側は現在を表す。同市長は「この記念碑は過去を直視することの大切さを表現している」と説明した。
同大戦中、オランダ領だった現在のインドネシアを日本軍が占領、軍人やオランダ人住民らを抑留した。また長崎などの捕虜収容所にはオランダ人兵士が収容され、被爆した捕虜もいた。両国間にはそうした「暗い過去」が厳然と横たわっていることを能木はあらためて感じ取った。
歓迎する市民の中に、日本に対し補償を要求している現地の団体「インドネシアの犠牲者を記憶する会」のブルハット・ディアゾーニ会長(69)がいた。高校生平和大使の訴えに理解を示しながらも「(過去の問題を)すべて解決してこそ、共に核廃絶を目指せる」と率直な心境を語った。
能木は言う。「日本にとって加害の問題は避けて通れないと感じた。学校などで教えてもらわなかったことだが、理解して(核廃絶の)活動をしなければいけない。今まで前ばかり見ていたが、後ろを振り返ることも必要だ」
同二十三日に訪問したスイス・ジュネーブの世界キリスト教女性青年会(YWCA)。フィリピン出身のクラリッサ・バランは歓迎スピーチで小泉首相の靖国神社参拝や歴史教科書問題を踏まえ、「若者が過去についてよく知ることが大事」と語りかけた。同時に「日本による平和運動はアジアにとって重要なこと」と期待も寄せた。
日本の戦争責任への取り組みと、核廃絶や平和に向けた世界との連帯が、互いに深くかかわっていることを高校生平和大使たちは心に刻んだ。(文中敬称略)