託された「宿題」
 =高校生平和大使の報告= 2

「あなたたちは『世界のシンボル』」と高校生平和大使を励ました、ロマン・モレー国連軍縮局ジュネーブ部長=スイス・ジュネーブ、国連欧州本部

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託された「宿題」 =高校生平和大使の報告= 2 訴えの拡大 世界に向けた発信を

2001/09/04 掲載

託された「宿題」
 =高校生平和大使の報告= 2

「あなたたちは『世界のシンボル』」と高校生平和大使を励ました、ロマン・モレー国連軍縮局ジュネーブ部長=スイス・ジュネーブ、国連欧州本部

訴えの拡大 世界に向けた発信を

「あなたたちは(核兵器廃絶を求める)『世界のシンボル』。私たちを助けてほしい」
エンリケ・ロマン・モレー国連軍縮局ジュネーブ部長が、国連欧州本部を訪れた三人の高校生平和大使との会見の中で求めたのは「核兵器廃絶への決断」に向けた、さらなる行動だった。それは同時に、核廃絶や軍縮に向けた国連の「限界」を認める発言でもあった。

南米ペルー出身の同部長は昨年の現職就任前、世界初の非核兵器地帯条約であるラテンアメリカ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約、一九六八年発効)の実施機関、ラテンアメリカ核兵器禁止機構(OPANAL)の事務局長を八年間務めた。「原爆投下は人類にとって大きな悲劇」との言葉に、長年核軍縮に携わってきた情熱と重みを感じさせた。

だが記者団のインタビューに対し、核軍縮が進まない現状について「国連に決定権はない。それは米国の手の中にある」と強調した。

同部長は、同本部に置かれている「ジュネーブ軍縮会議」の事務局次長を兼任。同会議は、世界唯一の、常設の多国間軍縮交渉機関。現在、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉開始のための作業計画策定が焦点となっている。しかし、米のミサイル防衛構想などをめぐる大国間の対立が影を落とし、近年大きな進展を見せていない。

「若い世代の平和活動は重要。将来は彼らが決定権を持つのだから」。同部長の平和大使に託した思いは、世界の核廃絶を願う大人たちの次世代に寄せる切実な期待を表したものといえる。

こうした期待を担う被爆地の高校生が取り組んだ「高校生一万人署名」。同本部でのスピーチで、署名活動の意義を紹介した能木絵美(大村高二年)は「私たちだけでなく、実行委員や多くの人の力で成功した」との思いを込めた。同部長は「署名活動にお礼を言いたい」と答えた。

一方で同部長は、いくつかの「アイデア」を平和大使たちに示した。「日本をはじめ各国の政治リーダーに訴えかけること」「インターネットを使った世界への呼び掛け」―など。堤千佐子(長崎東高三年)は「今後の活動に大きなヒントを与えてくれた。(一万人署名活動に取り組んだ)仲間たちと一緒に考えたい」と目を輝かせた。

同本部訪問は、被爆地の高校生が核兵器廃絶という大きな目的に対し、決して無力ではないことを三人に教えた。(文中敬称略)