結 実 「平和活動には忍耐必要」
「長崎に生まれたあなたには平和活動を継承していく使命がある」
「高校生一万人署名」実行委員会のメンバーで、今年の第四回高校生平和大使に選ばれた堤千佐子(18)=長崎東高校三年=は、母親にこう言われて育った。
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昨年五月、被爆地長崎から世界に反核平和のメッセージを届ける前回の同大使に応募、結果は惜しくも「紙一重の差」(関係者)で落選した。選考の際、「合否に関係なく、選考会の経験を今後の平和活動に生かしたい」と決意表明した。
「ここでやめたら、選考会で語った平和への思いがうそになる」。同年十一月の非政府組織(NGO)集会の青少年フォーラムの準備や「高校生一万人署名」実行委に参加。平和への思いをさらに深めてきた。そして「平和を願う気持ちが強ければきっと活動は継続できる」と確信したという。
「昨年の落選から、これまで平和活動に取り組んできた思いを表現したかった。一度けじめをつけ、新たなスタートを切りたい」と今年の同大使に再び応募。周囲から「三年生が選ばれた例はない」と聞かされたが、熱意が実り念願の大使に選ばれた。
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「高校生一万人署名」は先月十一日、目標より一カ月早く一万人を達成した。「長崎の高校生がいかに真剣に平和を願っているか。みんなの気持ちを無駄にしないよう思いを込めて届けたい」。署名簿を国連欧州本部(スイス・ジュネーブ)に届ける心境を聞かれたとき、堤はこう答えた。
「平和を願う高校生一万人分の署名を高校生が届けるなんて前例のないこと」としながらも「一万人集まったからすぐに核兵器がなくなるとは思っていない。だからといってやめるわけにはいかない」。そして「成果が見えないところで、いかに長期間頑張れるかが大事。平和活動に必要なのは“忍耐力”」と言い切る。
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実行委は十一日午後一時半から、長崎市平野町の長崎原爆資料館で「まとめの集い」を開き、集まった署名簿を堤ら三人の平和大使に託す。
「多くの人が原爆でつらい経験をし、今も後遺症で苦しんでいる。原爆を経験していない次代を担う若者が、核廃絶を強く願っていることを世界に伝えたい」。被爆地長崎の高校生の思いを手に堤らは二十一日、欧州に旅立つ。(文中敬称略)