被爆地域拡大の行方
 =決断を迫る長崎= 4

参院選長崎選挙区で再選された田浦直氏(左から2人目)。被爆地域拡大問題で厚労相政務官としての責任もかかる=先月29日夜、長崎市内の事務所

ピースサイト関連企画

被爆地域拡大の行方 =決断を迫る長崎= 4 政治判断 ボールは国に投げられた

2001/08/06 掲載

被爆地域拡大の行方
 =決断を迫る長崎= 4

参院選長崎選挙区で再選された田浦直氏(左から2人目)。被爆地域拡大問題で厚労相政務官としての責任もかかる=先月29日夜、長崎市内の事務所

政治判断 ボールは国に投げられた

参院選当日の先月二十九日夜。長崎選挙区で再選を果たした田浦直氏の長崎市内の事務所。「小泉改革を全力で支えたい」。田浦氏の言葉に支持者たちがわいた。

今年一月、厚生労働省で大臣、副大臣に次ぐ政治家ポストの政務官に就任。同省が抱える被爆地域拡大問題の間近に立つことになった。折しも、被爆未指定地域の問題を協議する同省検討会の審議が大詰めに差し掛かった先月、自らの改選を迎えた。

当選の翌朝、田浦氏は最初の仕事として被爆地域拡大を挙げた。「未指定地域問題は、戦後長崎の最も大きな課題の一つ。厚労省の中で強く主張していく」。そして今月一日、検討会は未指定地域住民について「被爆体験がトラウマとなり精神的、身体的な健康の悪化につながっている」と結論。これで専門家レベルの科学的な検討は終わり、ボールは国に投げられた。

長崎市と周辺六町、被爆者団体などの代表でつくる被爆地域拡大是正要請行動実行委員会の三日の会合。検討会の結論を報告した太田雅英・市原爆被爆対策部長は「(八月九日に来崎する)首相がこの問題に言及するのは間違いない」「科学的な結果は出た。ただ、国の対策は別問題」と、期待を込めながらも慎重な言い回しで説明した。

長崎側は、被爆者援護法に基づく定期的な無料の健康診断の結果、身体的な十一の障害のいずれかがあった場合に被爆者健康手帳の交付が受けられる「健康診断特例地域」による地域拡大を求めている。

国の被爆者援護は、放射線の健康影響を根拠としてきた。検討会は、被爆という体験による不安、社会の偏見などを要因とする障害という全く新しい根拠を示したが、未指定地域住民に関する放射線の健康影響は否定。被爆者対策の従来方針に照らすと、国が被爆者援護法の対象と判断するかは不透明だ。

上京した田浦氏は一日の検討会後、政府内の協議に参加している。だが、その政治判断の行方については、見通しを明言しない。「私の知る限り、いい方向に進んでいる。総理が長崎に来たとき、前向きな方向を示してほしい」。その言葉は、政務官としての決意とも、地域拡大を求める地元議員の願いとも聞こえる。