在外被爆者 救済へ先行き不透明 援護法の扱い あいまい
「被爆者救済に国境はあるのか」が問われ、在外被爆者や支援者らの注目を集めた六月一日の大阪地裁判決。同地裁は、日本で原爆に遭った海外在住の被爆者にも、被爆者援護法に基づく健康管理手当の受給資格があるとの初の司法判断を示し、国と大阪府を相手に受給資格の確認などを求めていた原告の郭貴勲さん(77)=韓国城南市=ら関係者は歓喜に沸いた。
長崎で被爆し、国と長崎市を相手取り同様の裁判を長崎地裁で係争中の韓国人元徴用工、李康寧さん(73)=韓国釜山市=とその支援者も判決をわが事のように喜んだ。だが、歓喜ムードは、大阪地裁での被告である国と大阪府の控訴によって、落胆と怒りへと一変した。
「在外被爆者の源流は広島、長崎にある。(帰国などで)韓国や米国に流れようが、被爆者は被爆者なんだ」。市民団体が十六日、長崎市内で開いた「郭さん・李さんを励ます集い」。旧日本軍に徴兵され、広島で被爆した郭さんは、支援者らを前に語気を強めた。
在外被爆者も高齢化し、韓国在住の被爆者が加入する韓国原爆被害者協会の会員は二千三百人足らずにまで減った。李裁判を支援する会の平野伸人事務局長は言う。「長崎地裁での勝利を勝ち取って、国や長崎市の控訴を断念させたい。どこにいても被爆者は被爆者であるという当たり前の状況を被爆地からの運動でつくっていきたい」
国は、坂口厚生労働相の「援護法の規定は在外被爆者の扱いがあいまい。年内に結論を出したい」との意向を受け八月一日、被爆者援護法見直しを議論する検討会の初会合を開く。だが、真の在外被爆者救済への礎となるのか、先行きは不透明だ。
「私の両肩にはすべての在外被爆者の悲願がかかっている。必ず勝つ」。十八日にあった長崎地裁での口頭弁論を前に、李さんは自らに言い聞かせるように決意を語った。一審判決は年内にも言い渡される。
被 爆 者 援 護 法
原爆医療法、原爆特別措置法の旧二法を一本化して成立、一九九五年七月に施行された。国の責任において被爆者に対する保健、医療、福祉にわたる総合的な援護対策を講じることなどが法の柱。