被爆地ナガサキの課題 2

放影研が今年5月に行ったアンケートの発送作業=長崎市中川1丁目、放影研長崎研究所

ピースサイト関連企画

被爆地ナガサキの課題 2 被爆二世健康調査 遺伝的影響 不安増す 国の援護策につながるか

2001/07/18 掲載

被爆地ナガサキの課題 2

放影研が今年5月に行ったアンケートの発送作業=長崎市中川1丁目、放影研長崎研究所

被爆二世健康調査 遺伝的影響 不安増す 国の援護策につながるか

今年五月、放射線影響研究所(放影研、長崎・広島市)による被爆二世の健康調査が本格的に始まった。国の援護策充実や援護の法制化につながるかは不透明なものの、「被爆の遺伝的影響はあるのか」という長年の課題解決に向け、被爆二世の期待は大きい。

調査は主に、生活習慣病などの疾患に被爆の遺伝的影響があるか調べるのが目的。長崎、広島両市や近郊に住む被爆二世と被爆者でない同世代の住民計約一万八千人を対象に、四グループに分け、年に一グループずつ郵便アンケートで健康状態などを尋ねる。その中で応じる意向を示した対象者に順次、健康診断調査を行っていく計画。

一九九九年に被爆二世側との合意が成立。専門家らによるプライバシー保護など倫理面や科学面でのチェックを随時行う形で進め、最終結果を二〇〇六年度をめどにまとめる。

放影研によると、五月に発送した第一回郵便調査では六月末現在で約53・5%が回答、うち約六割が受診を希望。また、今秋には昨年郵送した予備的調査の対象者らに対する健診調査が長崎、広島両市の放影研で始まる。

国は、被爆二世への遺伝的影響については「現時点では認められない」としながらも、放影研の調査には「結果に重大な関心を寄せている」としている。だが、施策充実につながるかについては現時点で「推移を見守るとしか言えない」との立場にとどまっている。

被爆二世への援護策は、単年度ごとの予算措置で調査を名目に行われる無料健診だけ。だが被爆二世は多くが生活習慣病などにかかりやすい年代に差しかかり、健康不安は切実さを増している。 全国被爆二世団体連絡協議会の平野伸人会長は「被爆二世にとって、最初で最後の大規模な調査。国の援護策充実につながるよう、過程をしっかりチェックしながら見守りたい」と話している。

被 爆 二 世
被爆者を両親またはどちらかに持つ、被爆者でない人。放影研は全国約八万九千人を把握、総数は数十万人ともいわれる。被爆者援護法は付帯決議で「被爆者の子や孫に対する影響の調査研究、対策に配慮する」よう求めている。