佐久間理事長が組織統一に言及した被団協の総会(上)、被爆者団体について語る山口客員研究員(右下)と直野教授のコラージュ

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「岐路の被爆者団体~高齢化の現場から~」【下】 継承とは 「非被爆者」と手携え 共感者増やし 理念 後世へ

2018/08/08 掲載

佐久間理事長が組織統一に言及した被団協の総会(上)、被爆者団体について語る山口客員研究員(右下)と直野教授のコラージュ

継承とは 「非被爆者」と手携え 共感者増やし 理念 後世へ

 被爆者組織の変容は長崎に限った話ではない。被爆地広島では、分裂の歴史がある二つの県原爆被害者団体協議会(県被団協)に統一を目指す動きが出ている。
 1960年代に原水禁運動が政治的立場の違いから分裂した影響を受け、広島の県被団協も旧社会党系と共産党系に分裂した。その共産党系の県被団協を2015年から率いているのが理事長の佐久間邦彦(73)だ。
 佐久間は、6月の日本原水爆被害者団体協議会(被団協)総会の場で、もう一つの県被団協に組織統一を持ち掛けた。運動の中身には共通部分が多い。「将来を見据えると、いつまでも分裂の尾を引いていても仕方がない」
 被爆者組織が核廃絶に果たす役割は大きい。だからこそ今以上に高齢化が進み行き詰まる前に、存続の糸口を見つける必要がある。会員には賛否の声があり、統一となれば相手側の意向も十分に踏まえなければならない。それでも「運動を強く長く持続させる最善の手段は、過去を乗り越えて統一することだと思う」。
 佐久間は過去からの脱却を考えている。
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 「長崎の証言の会」は、1969年の設立当時から被爆者と「非被爆者」の両者で組織化。互いに協力しながら原爆体験記の収集や普及を図ってきた。被爆証言集の編集長で、長崎大核兵器廃絶研究センター客員研究員の山口響(ひびき)(42)は「被爆者が減少し過渡期にある現在、証言の会の組織の在り方や活動は他のモデルとなり得る」と語る。
 被爆者の平均年齢は82歳を超え、長崎でも被爆2世らが組織に積極関与する時代を迎えている。ただ「被爆何世というところに組織の基盤を置くと門戸が狭まり、最終的に縮小傾向にならざるを得ない」と指摘。その点、被爆者と非被爆者が協働してきた50年間の活動は「被爆者がいない時代の『被爆体験の継承』を考えたときに、他の団体でも適用可能なやり方の一つだろう」。代わりを補うだけの組織維持でなく、被爆者とともに、また被爆者がいなくとも展開できる継続的な活動を考える時期に来た、と強調する。
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 広島市立大広島平和研究所教授の直野章子(46)は、組織の枠組みにとらわれない「継承」の在り方を提言する。「被爆者団体としては、どこかの地点で解散してもいいと思う。無理に被爆2世らで引き継ぐよりも、運動の理念を引き継ぐことが大切」
 広く共感者を増やすために取り組むべきことは、被爆者救済と核廃絶のために戦ってきた運動の記録を形に残すことだ。
 「多くの人の胸を打った歴史は、今後も多くの市民に勇気を与え共感させる力を持っている」
 再び被爆者をつくらない、との思いに共感した者同士が新たな運動を展開する方が「うねり」は大きくなると直野は考えている。
(文中敬称略)