廃絶の鍵は次世代に 消極的な姿勢 「教育で考え方変えられる」
-広島と長崎が被爆地と知ったとき何を感じたか。
学校では第2次世界大戦中に起きた遠い出来事のように教わった。欧州の学校では欧州大陸で起きたことが重視されるため、子どものころは核兵器について十分理解していなかった。
核軍縮を目指す活動を始めてから広島と長崎についてより多くのことを学んだ。2006年に初めて被爆者の話を直接聞いたときのことは今も鮮明に覚えている。とても心を動かされた。核兵器がもたらすものへの理解も大きく変わった。
-被爆者が被爆体験を語ることには、どんな意義があるのだろうか。
核兵器の非人道性と不道徳で残酷な影響について、生き証人として世界に警鐘を鳴らすとともに、市民や政策立案者に核兵器のない世界を創造するよう訴える特別な力を持っている。
-だが被爆者は高齢化し、いつかいなくなる。次世代はどうすべきか。
被爆者のメッセージを生かし続けるためには教育が鍵といえる。被爆者の悲惨な体験を直接聞くことには確かに大きな効果がある。しかし、最終的に核廃絶を実現できるかどうかは次世代にかかっている。
-世界には核軍縮に消極的なリーダーや市民がたくさんいる。彼らの考えを変えるにはどうすべきか。
やはり教育だ。核兵器で多くの人を虐殺する発想を支持する市民はほとんどいないと思う。核兵器が人類と環境に与える影響や、もたらすリスクを教育すれば考えを変えられるだろう。
また核兵器禁止条約は、核兵器に賛同しにくくなる規範を生み出した。今や核兵器は非人道的なだけではなく、違法ともいえる。
-ICANの認知度はまだ十分ではないようだ。
メッセージを世界に広めるため必死だ。各国を巡り、イベントを開いている。人々と活動を分かち合い、巻き込むためソーシャルメディアも使っている。メンバー一人一人が友人や周りの人と活動について話すだけでも、世界に大きな変化をもたらせると思う。
-今年は、国内外で核廃絶を訴えている「高校生平和大使」がノーベル平和賞の候補となった。メンバーに伝えたいことは。
市民の支援を集めながら核廃絶の必要性を啓発するという素晴らしい役割を果たしている。「そのまま突き進んで!」と伝えたい。
-長崎の市民へメッセージを。
日本を核兵器禁止条約に参加させてほしい。市民には政府を変える力がある。
◎プロフィル
1982年、スウェーデン・イエーテボリ生まれ。ストックホルム大で国際関係学、ロンドン大で国際法を学んだ。シンクタンクのジュネーブ安全保障政策研究所や、女性平和団体の婦人国際自由平和連盟での活動を経て2014年から現職。