ICANのノーベル平和賞授賞式が行われたノルウェー・オスロ市役所の前で、被爆者やピースボート関係者らと共に写真に納まる宮田さん(最前列の右から3人目)=2017年12月12日(ピースボート提供)

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核を見詰める 県内留学生アンケートから【3】 機運 廃絶へ“うねり”高まるか

2018/07/25 掲載

ICANのノーベル平和賞授賞式が行われたノルウェー・オスロ市役所の前で、被爆者やピースボート関係者らと共に写真に納まる宮田さん(最前列の右から3人目)=2017年12月12日(ピースボート提供)

機運 廃絶へ“うねり”高まるか

 
 -昨年、兵器禁止条約が国連で採択されたこと(A)と、非政府組織(NGO)兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が条約採択への貢献でノーベル平和賞を受賞したこと(B)を知っていましたか。(回答した留学生210人)
 ▽(A)も(B)も知っていた 19・5% 
 ▽(A)は知っていたが、(B)は知らなかった 24・3%
 ▽(B)は知っていたが、(A)は知らなかった 4・3%
 ▽(A)も(B)も知らなかった 44・3%
 ▽無回答・不明 7・6%
     ◇
 兵器の開発や使用などを法的に禁じる兵器禁止条約は122カ国・地域の賛同を得て採択されたが批准国数は現在11と、発効に必要な50に届いていない。日本政府に署名、批准を求める意見書を可決した県内議会も県議会と21市町議会のうちまだ5市町議会だ。
 今回のアンケートを見ると、条約そのものに加え、各国に署名、批准を働き掛けているICANの認知度も十分ではないようだ。
 ICANの川崎哲国際運営委員(49)は廃絶への機運について「活動に関わっている人は高まっているが、一般にはまだまだ」と感触を語る。広島、長崎両市長を中心に世界にネットワークを広げている平和首長会議の事務局も「国によって報道の力の入れ具合に差があるのも一因では」とみる。
 それでも101カ国・地域に468の連携団体を持つICANの組織力に活路を見いだした長崎原爆の被爆者がいる。雲仙市の宮田隆さん(78)。8月7日にICANの情報発信を支援する「ICANサポート・ナガサキ」(仮称)を県内の被爆者有志で設立する方針で具体的な支援の在り方を検討しているところだ。
 宮田さんは昨年12月、ノルウェーで開かれたICANのノーベル平和賞授賞式を現地入りして見守った。ICAN構成団体の一つで、川崎国際運営委員が共同代表を務めるピースボート(東京)の船に乗り各国で被爆体験を語った経験があり、ICANについても詳しく知りたかったからだ。
 ICANのベアトリス・フィン事務局長が受賞あいさつで「ヒバクシャ」という言葉を発した瞬間、「被爆者と世界がつながった。国際潮流に乗り遅れてはいけない」と感じたという。
 世界各国に兵器禁止条約への参加を求める「ヒバクシャ国際署名」活動も続け、まずは日本の条約参加を目指す。「国内から声を上げるだけではなく、ICANによる外からの圧力が重要だ。サポート団体をつくり、その後押しをする。それが被爆者として最後の役割だと思っている」
 禁止条約の採択、ノーベル賞受賞という好機を生かし、海外へ廃絶の“うねり”は高まるか。市民社会の力も問われている。