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佐世保と安全保障 半島有事への備え② ミサイル対処 連携の強化図れるか

2018/03/27 掲載

ミサイル対処 連携の強化図れるか

 玄関ロビーに負傷者役の人が次々と運び込まれる。ブロック塀の下敷きによる壊死(えし)や全身やけど…。医師や看護師は、けがの程度を見極めて治療の優先順位を決めるトリアージなどの対応に追われた。

 昨年11月に佐世保市総合医療センターが取り組んだ、弾道ミサイル攻撃に伴う落下物の飛来を想定した災害医療訓練。澄川耕二院長(70)は朝鮮半島情勢を踏まえ「さまざまな対応を想定しておかないといけない」と力を込める。

 負傷者役の看護学生72人それぞれに、けがの程度などを記載した“台本”を渡す念の入れよう。課題も浮き彫りになった。発生直後の被害状況の報告が集中したため、院内連絡用のPHSは瞬間的にパンク。特定の外傷や重体患者の治療など外科系の医師に業務が集中した。「どういう患者だったら何人受け入れられるか。医学的な内容にまで踏み込んで準備をする必要がある」。澄川院長は他の医療機関との連携の必要性も強調する。

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 米海軍佐世保基地は1月、国務省と国防総省が米兵の家族らを米本土に輸送する「非戦闘員退避活動」を発動した想定で避難訓練をした。佐世保基地は「定期的な訓練で、今回はテロの可能性がある安全保障上の脅威を想定した」と説明。基地内でのシミュレーションだったが約200人が参加した。

 このように佐世保では「半島有事への備え」と読み取れる動きが目立つが、今のところ組織単体での動きにとどまる。

 市は新年度、弾道ミサイル着弾を想定した国民保護訓練を計画。ポイントの一つに「関係機関との連携強化」を挙げる。住民の避難誘導や被災者の捜索・救出の手順といった着弾後の初動対応を自衛隊や警察と確認する図上訓練と、複数の医療機関と連携した負傷者救護の実動訓練を検討している。

 市は「緊密な連携が不可欠な相手」として佐世保基地にも参加を要請する方針。佐世保基地はこれまで市の防災訓練には参加しているが、ミサイル訓練は前例がないため現状では「上層機関の許可なしに参加できない」としている。大隈隆雄防災危機管理専門官(57)は「まずは初動対応をしっかりしたい。米軍も含め関係機関から知りたい情報を積極的に集める仕組みづくりを考える」とする。