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佐世保と安全保障 半島有事への備え① 米朝関係 対話の先は見通せず

2018/03/26 掲載

米朝関係 対話の先は見通せず

 昨年11月、日本海。3隻の米原子力空母と隊列を組んで整然と航行する海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」(1万3950トン)の姿があった。海自の戦術技量向上と米海軍との連携強化を目的とした共同訓練。佐世保を母港とする「いせ」は、この2カ月前にも日本近海で米原子力空母と訓練をしていた。いずれも核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮をけん制する狙いがあった。
 海自の元自衛艦隊司令官、香田洋二氏(68)は「いせは空母型の護衛艦。米国の空母と一緒に行動する心理的な効果は大きい。日米同盟は盤石で、つねに機能していますよ、というメッセージ」と日米の思惑を代弁する。
 緊迫の度を増していた朝鮮半島情勢だが、3月上旬に急展開を見せた。4月末に南北首脳会談、5月までに米朝首脳会談という話が持ち上がり、一気に対話ムードが高まる。ただ北朝鮮が「核カード」を手放したわけではなく、先行きは不透明だ。
 海自の幹部隊員も「いかなる事態にも対応できるよう、情報収集や警戒監視などに万全を期す」と表情を緩めない。いせは3月中旬にも沖縄近海で米原子力空母と共同訓練をした。

 歴代米政権は朝鮮半島の非核化を目指しながら、北朝鮮の瀬戸際外交に翻弄(ほんろう)され、結果的に核開発の進展を許してきた。香田氏は「核戦力の実用化まで最終局面に来ており、止められなければ、核保有国として認めざるを得ない。核拡散のリスクも高まり、人類にとって最悪の状況になる」と危惧。その上で「首脳会談は最後の外交手段。対話が決裂すれば米国は攻撃しか選択肢がなくなる」と指摘する。
 仮に米軍が軍事行動を起こした場合の香田氏の見立てはこうだ。▽米軍は北朝鮮の核・ミサイル能力無力化を目的に単独攻撃▽自衛隊は弾道ミサイル防衛や日本近海の警戒監視▽北朝鮮の日本への攻撃は極めて限定的-。
 その上でミサイル落下を想定した避難訓練など“有事への備え”の必要性を説き、こう強調する。「日ごろからの心構えと物理的な準備が必要。現実的なシナリオと懸け離れていることはあり得るが、重要なことは訓練をやることで有事の際に自分で考えて体が動く。初動で命を分けることがある」
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 目まぐるしい動きを見せる朝鮮半島情勢。北朝鮮は対話が続いている間は核・ミサイル実験を凍結する意思を示すが、半島有事の恐れが消え去ったわけではない。「佐世保と安全保障」の第3シリーズは、国境を接する本県で「危機」への備えはどうなっているのか-。基地の街・佐世保と国境の島・対馬の現状を追った。