原子力防災 安全 担保されてるか
佐世保港に程近い佐世保市環境センターの一室。自動制御された計測機器が24時間休まず稼働している。
港周辺にはセンターを含め7カ所に原子力規制庁が放射線監視装置(モニタリングポスト)を設置。計測した大気中や海水の放射線量をホームページで公表している。原子力空母や原子力潜水艦の寄港時には、規制庁職員らが佐世保海上保安部の調査艇で海域に異常がないか調べる。佐世保原子力艦モニタリングセンターの田尻裕昭所長は「万全の調査体制を整えている」と胸を張る。
気象条件などを考慮し設定された警報値(空間放射線量が1時間当たり100ナノグレイ)を上回る数値が検出された場合、より詳細に測定し、データを解析して原因究明を図る。市は災害対策本部を設置。関係機関と連携し、状況に応じて住民の避難誘導などに当たる。
市は2002年から毎年、放射能漏れを想定した防災訓練をしているが肝心の米海軍佐世保基地は参加していない。理由は「事故は起きない」「佐世保は母港ではない」。
米国政府は06年に出した原子力艦船の安全性に関するファクト・シートで「四重の防護壁で炉心から出る放射能が周辺の環境に放出されるという可能性は極めて低い」と強調。最悪の場合でも影響は「艦船付近や基地内にとどまる」との見解を示している。
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米原潜を巡っては1968年にソードフィッシュが佐世保寄港時に放射能調査で異常値を計測。2008年にはヒューストンが長期にわたり微量の放射能漏れを起こし、佐世保にも寄港していたことが発覚した。
国内の米原潜寄港地は佐世保市と神奈川県横須賀市、沖縄県うるま市(ホワイトビーチ)の計3カ所。原子力空母の母港である横須賀市では08年から日米合同で防災訓練をしている。
佐世保基地の従業員でつくる全駐留軍労働組合長崎地区本部は、災害発生時の行動基準などを具体的に示すよう、雇用主の国に求めている。渡邊秀與書記長(58)は「市に危機感が感じられない」と不満を口にする。国内の寄港地で接岸場所から半径500メートル内に住宅地があるのは佐世保だけ。渡邊書記長は訴える。「市民の安全は本当に担保されているのか。『国策だから』とただ協力するのは正しいのか。佐世保市は市民の安全を守る義務がある」