長崎県壱岐市には小学校に六つ、中学校に四つの軟式野球のチームがある。2022年には勝本中が県中総体、郷ノ浦中が県少年軟式大会で優勝。高校を含めて、各世代が毎年のように県大会で8強入りしており、島の野球のレベルは高い。
■3割が野球部
同市によると、現在、中学生男子の約3割が軟式野球部に所属。四つの中学全てで野球経験のある教員が指導している。教員らは本土での指導者研修会にも積極的に参加。相互交流しながら、時代に即した高水準の指導を心がけている。
島の中学で教員として30年以上指導し、全国の中学離島球児が集まる「離島甲子園」でも監督を務めてきた松永利孝(66)は、島の野球人気の高さをこう説明する。「壱岐では部活動数が少なく、必然的に野球をするしかなかったという面もあるが、野球好きな人間が多い。保護者も野球に対する理解がある」
地域住民の物心両面での支援も大きい。壱岐高グラウンドでの練習試合をする際は、OBらが審判を務め、本番さながらの雰囲気で実戦経験を積んでいる。昨秋の九州大会(大分)出場時は多くの寄付金や差し入れも集まった。主将の浦上脩吾(2年)は「地域の方々の支えがなければ活動できていない」と感謝を口にする。
■動き始めた島
春の甲子園出場が決まると、地域は沸きに沸いた。壱岐出身で1976年夏に海星高を甲子園4強に導いた酒井圭一(66)の同級生の松永は「サッシーの海星が試合をしていた時は、島中がテレビにくぎ付けになっていた。でも、今回はそれ以上。もしかすると過去一番の盛り上がりかもしれない」と目を細める。
地域は早々に甲子園に向けて動き始めた。市はクラウドファンディングで支援金を募り、27日現在で約600万円が集まっている。野球部後援会長の川井智睦(58)も「金銭面で子どもたちに変な心配をかけたくない」と企業回りに奔走中。甲子園出場が決まる前から、支援を呼びかける地域の回覧板もあった。
約2カ月後、長崎県の離島の学校が初めて高校野球の聖地に立つ。監督の坂本徹(40)は「自分たちは甲子園に出場することが目標ではなく、そこで勝つことが目標」と選手たちに言い聞かせてきた。確かに彼らが活躍すればするほど地域は活性化し、全国の離島のアスリートたちへ勇気を届けることになるだろう。
有望な中学生が島外に流出する壱岐島の野球事情。指導者をはじめ、島民の多くがそれを憂い、少しでも歯止めをかけたいと思っている。
「団結すれば壱岐からでも甲子園に行けると選手たちが証明してくれた。壱岐は横のつながりで切磋琢磨(せっさたくま)しているが、縦の関係性が少ない。この甲子園出場をきっかけに何かが変わるはず」
坂本はそう信じて、島の希望となる「1勝」を取りにいく。
■3割が野球部
同市によると、現在、中学生男子の約3割が軟式野球部に所属。四つの中学全てで野球経験のある教員が指導している。教員らは本土での指導者研修会にも積極的に参加。相互交流しながら、時代に即した高水準の指導を心がけている。
島の中学で教員として30年以上指導し、全国の中学離島球児が集まる「離島甲子園」でも監督を務めてきた松永利孝(66)は、島の野球人気の高さをこう説明する。「壱岐では部活動数が少なく、必然的に野球をするしかなかったという面もあるが、野球好きな人間が多い。保護者も野球に対する理解がある」
地域住民の物心両面での支援も大きい。壱岐高グラウンドでの練習試合をする際は、OBらが審判を務め、本番さながらの雰囲気で実戦経験を積んでいる。昨秋の九州大会(大分)出場時は多くの寄付金や差し入れも集まった。主将の浦上脩吾(2年)は「地域の方々の支えがなければ活動できていない」と感謝を口にする。
■動き始めた島
春の甲子園出場が決まると、地域は沸きに沸いた。壱岐出身で1976年夏に海星高を甲子園4強に導いた酒井圭一(66)の同級生の松永は「サッシーの海星が試合をしていた時は、島中がテレビにくぎ付けになっていた。でも、今回はそれ以上。もしかすると過去一番の盛り上がりかもしれない」と目を細める。
地域は早々に甲子園に向けて動き始めた。市はクラウドファンディングで支援金を募り、27日現在で約600万円が集まっている。野球部後援会長の川井智睦(58)も「金銭面で子どもたちに変な心配をかけたくない」と企業回りに奔走中。甲子園出場が決まる前から、支援を呼びかける地域の回覧板もあった。
約2カ月後、長崎県の離島の学校が初めて高校野球の聖地に立つ。監督の坂本徹(40)は「自分たちは甲子園に出場することが目標ではなく、そこで勝つことが目標」と選手たちに言い聞かせてきた。確かに彼らが活躍すればするほど地域は活性化し、全国の離島のアスリートたちへ勇気を届けることになるだろう。
有望な中学生が島外に流出する壱岐島の野球事情。指導者をはじめ、島民の多くがそれを憂い、少しでも歯止めをかけたいと思っている。
「団結すれば壱岐からでも甲子園に行けると選手たちが証明してくれた。壱岐は横のつながりで切磋琢磨(せっさたくま)しているが、縦の関係性が少ない。この甲子園出場をきっかけに何かが変わるはず」
坂本はそう信じて、島の希望となる「1勝」を取りにいく。