長崎市の不登校支援「一人一人に合った学びを」 施設利用者増、環境維持に課題

2025/02/03 [12:00] 公開

長崎市の「学びの多様化学校」は来年4月に市民会館2階の研修室に設置される=同市魚の町

長崎市の「学びの多様化学校」は来年4月に市民会館2階の研修室に設置される=同市魚の町

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不登校の児童生徒支援に力を入れようと、長崎市は2026年4月に「学びの多様化学校」を長崎県内で初めて開設する。不登校の子どもが通う同市学びの支援センター「ひかり」と連携を図る予定だが、利用者数が増え、限られた職員数での運営に課題もある。市教委は受け入れ環境の維持に努め、「一人一人に合った学びの場を整えていく必要がある」と強調する。

■最多
 「5年前の2倍以上に増加しています」。昨年9月の定例市議会で、西本德明教育長は不登校児童生徒数の現状をこう説明した。市教委によると、23年度は1156人(小学生449、中学生707)で、過去最多を更新している。
 学びの多様化学校は、文部科学省が認定し、学習指導要領に縛られずに授業時間を変更するなど児童生徒の実情に合わせた柔軟な対応ができる。23年に「不登校特例校」を改称した。24年4月時点で16都道府県に公私立計35校が設置され、同省は全国で300校に増やしたい考えだ。
 不登校は学年が上がるにつれて増える傾向があり、同市の多様化学校は中学生から受け入れを始める。市立桜馬場中の分教室と位置付け、市民会館(魚の町)2階の研修室を改修する。定員は各学年10人。「状況を見極めながら小学生も含めた本校化を目指し、開設場所をどこにするのか、統廃合により空いた場所なども含めて検討していく」(西本教育長)という。

■自立
 一方、学びの支援センター「ひかり」は進路を主体的に考えてもらい、社会的自立に向けた力を育む目的。市民会館7階にあり、市教育研究所によると、利用者は本年度2学期末時点で約110人。自習や所属校とつないだリモート授業、軽い運動などに励んでいる。職員が集団や個別での相談・指導に当たる。
 多様化学校への通学を希望する生徒にはまず「ひかり」に体験入室してもらい、同校に通学できるかを確認。保護者や本人の希望などを勘案し、同校への「入室」を決定するという。

■不安
 「ひかり」の課題は限られた職員数での運営だ。同研究所によると、利用希望者が増え、▽新規受け入れの難しさ▽集団が苦手な利用者への配慮▽安全の確保-を理由に、昨年12月からは利用回数の制限を設けた。市教委の担当者は「職員数や場所の問題から苦渋の判断だった」と話す。
 子が「ひかり」を利用する40代男性は「不登校の急増で受け入れが困難になるのは理解できる」としつつ、「行政が取るべき措置は増員や施設拡充ではないか」と訴える。多様化学校設置に伴い「ひかりの規模が縮小されるのでは」との不安もある。
 これに対し、同研究所の担当者は「受け入れ態勢に影響はない。これまで通りの支援ができるよう、部屋の確保にも努めていく」とする。民間のフリースクールなどとの連携も重要と強調し、「一人一人の児童生徒に合った学びの場があることが一番いい形。選択肢を多く整えていかないといけない」と話す。