伸び悩む活動カバー率…長崎県内の自主防災組織 担い手増へ市町が苦慮、自治会離れも課題

2025/01/30 [10:30] 公開

市町の自主防災組織活動カバー率

市町の自主防災組織活動カバー率

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「自主防災組織」の結成状況を示す活動カバー率が74・8%(2024年4月1日現在)と、国内全体の85・4%(同)と比べて10ポイント以上低い長崎県。地域で日ごろの防災活動を担い、災害発生初期の段階では住民同士が助け合う「共助」の要だが、結成促進は市町に負うところが大きい。「地域のリーダーがいない」「組織化のノウハウがない」といった声も上がる中、鍵となる住民の防災意識を高めようと、県や市町はさまざまな取り組みを試みている。

 長崎大水害(1982年7月)に見舞われている長崎市は71・2%と、県合計を下回る。

 市防災危機管理室によると、自主防災組織は自治会をベースにしている。普段から顔を合わせている地域の人たちで結成・運営してもらおうとの狙いからだ。ところが、住民の高齢化に伴い役員のなり手が減り、都市化で住民同士の関わりも薄れ、自治会離れが課題となっている。

 このため、より広域で多くの住民が加わる連合自治会や、青少年育成協議会、PTAなど多様な団体でつくる「地域コミュニティ連絡協議会」などに自主防災組織の結成を呼びかけている。「若い人たちに加わってもらい、活性化させたい」としている。

 カバー率56・0%の諫早市は、諫早大水害(1957年7月)をはじめ、自然災害に度々襲われている。

 市は防災啓発策として、住民が地域の避難経路や危険ポイントを確認して書き込む「防災マップ」作りを支援。これまでに市内の自治会のうち、約90%がマップを完成させた。市危機管理課は「これを基に地域で避難訓練や防災資機材の点検に取り組み、自主防災組織につなげてもらいたい」としている。

 県も防災の担い手を増やそうと、防災推進員(自主防災リーダー)養成講座を各地で順次開いている。2024年度は新上五島町など3市町で実施した。

 同町のカバー率は39・3%。町消防防災室によると、高齢化が進み、担い手不足に悩まされている。そうした中で開かれた養成講座には消防団員ら20人が参加し、高校生の姿もあった。同室は「受講生のネットワークを生かしてほしい」と期待している。