石綿被害救済の変更、国が敗訴 「除斥」起算点前倒し争点、大阪

共同通信 2025/04/17 [14:46] 公開

大阪高裁が入る合同庁舎

大阪高裁が入る合同庁舎

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 アスベスト(石綿)を扱う工場で働きじん肺を患ったとして、兵庫県の元労働者の遺族が国に約600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(三木素子裁判長)は17日、請求を退けた一審判決を取り消し、国に賠償を命じた。

 賠償請求権が消滅する「除斥期間」(20年)の起算点の取り扱いが主な争点。国が2019年、起算点を前倒しして救済範囲を狭める運用変更をしたことで、元労働者は対象から漏れていた。23年12月の大阪地裁判決は、遺族側の請求を棄却した。弁護団によると、別の元労働者の訴訟では、25年に最高裁が国の運用変更を認めず元労働者側の勝訴が確定している。

 石綿健康被害救済では、国の賠償責任を認めた14年の「泉南アスベスト訴訟」最高裁判決を受け、国は一定の要件を満たした当事者らと和解。除斥期間の起算点について、当初は都道府県の労働局が健康被害を認める決定をした時としていたが、19年に「石綿被害の発症が認められる時」に早めた。除斥期間の起算点が早まれば請求権が消滅する人がいるが、国は周知しなかった。