使わないのはもったいない?長崎市歴史民俗資料館の茶室 3月、数年ぶり利用 今後も活用検討へ

長崎新聞 2025/04/09 [12:25] 公開

訪日客らが参加した「長崎のお茶体験会」=長崎市歴史民俗資料館

訪日客らが参加した「長崎のお茶体験会」=長崎市歴史民俗資料館

  • 訪日客らが参加した「長崎のお茶体験会」=長崎市歴史民俗資料館
  • 京都・龍安寺を模した枯れ山水の石庭。「つくばい」(左下)には「吾唯足知」の文字が刻まれている
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「長崎市歴史民俗資料館には素晴らしい茶室があります。が、もったいないことに使用禁止です-」。長崎新聞の双方向型報道窓口「ナガサキポスト」に、こんな投稿が届いた。調べてみると、市平和会館地下1階の同資料館にあり、市民に貸し出す施設としては運用されていないが、資料館側が先月下旬、インバウンド(訪日客)向けのお茶の体験会で数年ぶりに利用した。世界遺産に登録されている京都・龍安寺を模した枯れ山水の庭が付いた本格的な茶室。資料館側は今後も活用を進める方針。

 「お茶わんを回して、はい飲んでください」。3月22日午前。同資料館の茶室は外国人でいっぱいだった。同資料館や長崎原爆資料館などの指定管理者「NBCソシア-トラスティ共同事業体」が開いた「長崎のお茶体験会」。一段高い畳の間でお茶をたてる表千家教授、塩崎みちえさんらを囲むように置かれた椅子に外国人らが座り、作法を教わりながら抹茶を味わった。
 庭は1階から吹き抜けになった地下の屋外にあり、茶室から景色が楽しめる。円形の「つくばい」(石の手水鉢)には龍安寺にある物と同じ「吾唯足知」の文字が刻まれている。
 同管理者によると、クルーズ船の入港に合わせ開催。外国人向けのお茶の体験会は別の指定管理者だった2019年にも一度あったが、その後は新型コロナ禍などで開かれていなかった。無料で、訪日客のほか市民も参加。県産茶の飲み比べなどもあり、約60人が日本文化体験を楽しんだ。
 参加した佐世保市の女性(70)は「私もお茶を習っているので、魅力を知ってもらう良い取り組み。これからも続けてほしい」と語った。
 長崎市平和会館は1981年7月開館。現在、市歴史民俗資料館がある地下1階は企画展示場で、茶室も当時からあった。82年発行の市立博物館々報第22号には同会館オープン後の81年11月、地下茶室で市民茶会が開かれたとの記録がある。
 企画展示場は84年から市立博物館となり、閉館後の2006年に上銭座町から市歴史民俗資料館が移転した。06年に同資料館長だった永松実さん(74)によると、移転当時は茶室の庭部分が資材置き場になっていた。同資料館が09年までに、現在の龍安寺を模した石庭に再整備したという。
 3月まで同資料館学芸員だった永松さんは「立派な茶室なので、ぜひ活用してほしい」と話す。同管理者の林田繁和統括施設長(3月末で転任)は「訪日客向けのサービス向上や資料館への誘客などに向けて、今後も茶室の活用を検討していきたい」とした。