インバウンド呼び込め! 長崎・雲仙が国のモデル観光地事業に 「火山」テーマに地域深掘り

2025/01/10 [12:45] 公開

いす付きの竹製かご「チェアかご」を使うモニター。欧米人の避暑地として人気だった100年ほど前を再現した=2023年10月30日、雲仙市小浜町

いす付きの竹製かご「チェアかご」を使うモニター。欧米人の避暑地として人気だった100年ほど前を再現した=2023年10月30日、雲仙市小浜町

  • いす付きの竹製かご「チェアかご」を使うモニター。欧米人の避暑地として人気だった100年ほど前を再現した=2023年10月30日、雲仙市小浜町
  • 野外にテントを張り、地元の一流シェフの料理を楽しんだ「天幕レストラン」=雲仙市小浜町雲仙、2024年11月26日(雲仙観光局提供)
  • 採れたての「デジマ」を試食するモニター=2024年11月25日、雲仙市南串山町(雲仙観光局提供)
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雲仙で実施されている国の高付加価値モデル観光地推進事業(5カ年)は、2025年度から3年目に入る。大都市だけでなく地方にインバウンド(訪日客)を呼び込むために、新年度は地域の魅力を深掘りした商品づくりを進めていく。中心となる雲仙観光局の取り組みを探った。

◆天幕レストラン

 昨年11月下旬、雲仙・白雲の池の湖畔。白い大型テントの下に、贅(ぜい)を尽くした料理が並んでいた。風光明媚(めいび)な景勝地で優雅な食を楽しむ「天幕レストラン」。雲仙観光局の企画で、雲仙が欧米人の避暑地として人気だった明治時代から昭和初期の様子を、当時の資料に基づき再現した。

 モニター参加者は地元一流シェフの料理に舌鼓を打ち「歴史の裏打ちであり、世界中の商品と差別化を図れる」「雲仙ならではの食材や飲料はもちろん、料理人やスタッフも地域での運営であることに感服した」と高く評価した。

 雲仙は23年3月、「火山」をテーマにしたエリアの一つとして、阿蘇、鹿児島と共にモデル事業に選定された。24年度の予算は約1億8千万円。富裕層向けの観光商品を作り出す絶好のチャンスとなる。

◆地域資源を「商品」に

 3地区を取りまとめる雲仙観光局は、火山との共生から生まれた3地区共通の普遍的価値を「サステナブルな暮らし・食文化」「現代に息づく山岳信仰と歴史文化」「暮らしと一体化した自然とパノラマ景観」と定めた。これらの地域資源を、具体的な観光商品に反映させる。

 ターゲット層は、中国・アジア圏から訪れる旅行消費額150万円程度の富裕層。一般層に比べて10倍以上の額だ。「火山と共にある生活文化」や自然体験、食などの強みを売り込む。
 火山と共生する文化には温泉のほか、火山灰の肥沃(ひよく)な土壌で栽培されるおいしい農作物や土のミネラルが海に注がれて育つ豊富な魚介類などがある。

 これらを生かし、高付加価値旅行者を対象に商品を考案。天幕レストランのほかにも、長崎・茂木から欧米人の避暑地として親しまれた雲仙への道のりをたどる「The Road to UNZEN」、九州の守り神を祭る雲仙の「四面宮」の誕生をテーマにした演劇鑑賞などを楽しむ「四面宮伝説」といった8案がある。

◆体験コンテンツも

 天幕レストランには、希少種のジャガイモ「デジマ」を掘って試食するなど、生産者の思いを知り取り組みを体験するツアーも付く。旅行会社などのモニターツアーで磨き上げを図っている。

 漁業体験ツアーに携わる南串山町の巻き網漁業会社「天洋丸」の萩生田惇さん(27)は、取れたての魚を刺し身にして食べる際には、日本の食文化だと伝えた方がいいと旅行会社からアドバイスを受けた。「動物愛護の観点や生食を食べる文化がない国への配慮が必要だ」と気付いたという。

 旅行商品には、豊かな自然や1次産業、歴史、文化など、地域ブランドを象徴する体験コンテンツや演出を増やすことが求められる。ほかにも、複数のベッドルームや客室露天風呂を備える高付加価値な宿泊施設の増設や、顧客の興味関心に合わせた高いレベルのガイド養成などが課題だ。

 雲仙観光局の山下浩一代表理事は「雲仙ならではの歴史や自然のコンテンツを深掘りして磨き上げ、インバウンドを含めた新たなお客さまを掘り起こしたい。雲仙市内はもちろん、島原半島全体への波及効果を図るよう努める」と意欲を語った。