銀座通りの店は朝から休業している。何かと思ったら、諒闇(りょうあん)(天皇の崩御で喪に服すること)だと人に聞いた。そうか、昨夜から家を出ていなくて知らなかったな…。永井荷風は元号が大正から昭和に改まる日のことを日記にそう書いた▲思えば、店がどこも閉まる自粛ムードは昭和の終わりも同じだった。日記は1926年12月25日付で、昭和元年はわずか7日間で終わる。昭和最後の年(昭和64年)も1月7日で幕を閉じ、こちらも7日間。昭和の始まりと終わりには不思議な符合がある▲1926年に99を足すと2025年。今年は昭和元年に99を足した「昭和100年」に当たる。いや、終戦の昭和20年から80年たって昭和100年-と言う方が歳月をたどるにはふさわしい▲「昭和100年問題」が浮上しているという。日本のコンピューターには年を「昭和○年」に置き換えて管理しているものがあり、それが3桁になると誤作動があり得るらしい▲誤作動ならばデジタルの世界に限らない。不安定な政情、物価高、戦火のやまない世界…。うまく作動、作用しない事柄を挙げれば切りがない▲今年は戦前からの100年を一つの線でたどる年になる。同時に、私たちの現在地にどんな誤作動、不具合が存在するのか、目を凝らし“測定”する年でもある。(徹)
昭和100年
長崎新聞 2025/01/08 [10:53] 公開