歯ブラシなし、食材無駄なく…長崎の宿泊施設でSDGs広がる 持続可能な観光へ従業員研修も

長崎新聞 2025/04/24 [12:15] 公開

客室内に設置された分別できるごみ箱=長崎市、セトレグラバーズハウス長崎

客室内に設置された分別できるごみ箱=長崎市、セトレグラバーズハウス長崎

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長崎県内の宿泊施設で、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けての取り組みが広がっている。環境に配慮して歯ブラシなどのアメニティーの配布を廃止したり、社内で推進組織を立ち上げて研修をしたり-。消費者の関心も高まる中、各施設さまざまな試みでSDGsに貢献している。

 長崎市南山手町のセトレグラバーズハウス長崎では、歯ブラシやくし、カミソリなどの使い捨てアメニティーの配布をやめた。ホテルを運営するホロニック(神戸市)が国内に展開する5施設で取り組む「ZERO PROJECT」の一環で、2022年から実施。24年度のアメニティーのプラスチック削減率は96・7%に上った。他にも、客室のごみ箱を紙とペットボトル、プラスチックに分別する仕様にし、資源として再利用している。担当者は「客からのクレームを心配していたが、『環境に配慮したすてきな取り組み』などといった声もあり、SDGsへの関心の高まりを感じる」と話す。

 食材を余すことなく活用する動きもある。長崎市尾上町の外資系高級ホテル、ヒルトン長崎では、調理過程で発生したかんきつ類の皮を乾燥させ粉末状にして、塩と混ぜたものを再び料理で使っている。西海市のオリーブベイホテルでは、生ごみを堆肥に変える処理機「バイオメイト」を使用。近隣で農業を営む人が減っているため、引き取り手は少なくなっているものの、要望があればできた堆肥を引き渡すという。

 ホテル内で社員の関心を高める取り組みも。長崎市曙町の稲佐山観光ホテルでは21年、社内でSDGs推進委員会を立ち上げた。宿泊本部や調理部など各部から選出した推進委員で構成。月に1回、県内企業などから講師を招いて他社の事例を学び、各部で年間の目標を立てている。昨年度は、男女平等や働きがい向上に向けて、深夜帯の女性従業員のためのベビーシッター体験会を開くなどした。同ホテルの宮田稔取締役管理本部長は「従業員から自然とアイデアが出るようになった」と変化を話す。

 長崎国際大(佐世保市)の井上英也人間社会学部長は、客がホテルを選ぶ際、環境に配慮した取り組みも近年は重視しているとして、アメニティー削減などの動きの必要性を強調。日本は欧米などに比べてこの動きが遅れているとし、「変わらないと置いていかれる。観光も持続可能なものにしなければいけない」と語った。