英語の「ホスピタリティー」(もてなし)と「ホスティリティー」(敵意)は似ているが、意味はまるで違う。ラテン語の語源もそれぞれ「ホスペス」(お客を保護する人)、「ホスティス」(異邦人)と似た響きがある▲おもてなしの心を大切にしているが、よその市町村には敵意とは言わないまでも、競争心を燃やしている…。これが自治体の“本音”かもしれない。人口減少に歯止めがかからない中、地域間で移住者獲得の競争が起きている、と考える自治体トップが多いらしい▲共同通信社がこの夏、全国の知事、市区町村の長に尋ねたところ、7割ほどが地方創生の取り組みを「不十分」と答えた。移住者の“争奪”があり「自治体単独では限界」という声も多い▲五島市では市内に転入した人の数が転出した数を上回る「社会増」になった年がある。国境離島新法で雇用が生じ、市の移住支援などが人を呼び寄せたとみられる▲知恵は絞り次第という好例に違いないが、今後も終わりのない自治体間の競争が続くとすれば、どうだろう。いずれ「勝ち組」「負け組」に分かれるのは想像に難くない▲ふるさと納税も観光客の誘致も、国は自治体の競争心をあおり、当てにしてこなかったか。国にこそホスピタリティーの語源「保護する」努めが欠かせない。(徹)
自治体間の競争
長崎新聞 2024/09/04 [10:00] 公開