長崎くんちがきょう開幕、390年の伝統と変遷 県庁に障害児用の休憩所も

2024/10/07 [10:25] 公開

390年の節目を迎える諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」。開幕を前に桟敷席の設営も準備万端=長崎市上西山町

390年の節目を迎える諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」。開幕を前に桟敷席の設営も準備万端=長崎市上西山町

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諏訪神社(長崎市上西山町)の秋の大祭「長崎くんち」が7日開幕する。1634年、2人の遊女高尾と音羽が神前に謡曲「小舞」を奉納したのが始まりとされ、江戸時代の大火災や昭和の戦災、大水害などを経て、390年の伝統をつないできた。みこしの稽古文化やお旅所の露店などは時代と共に変化を遂げ、障害児など多様な人が楽しめるような工夫も進む。
 長崎くんちの原型となる奉納踊りは江戸時代に始まった。禁教令が敷かれる中、キリスト教信者が多かった長崎に幕府が寺社を根付かせようと、長崎奉行の援助で9月7、9日に諏訪と住吉2基の神輿(みこし)渡御を実施。ここで遊女が舞を演じたのが始まりとされる。
 今年の踊町は、興善町、八幡町、万才町、西濵町、麹屋町、銀屋町、五嶋町の7カ町。神輿守町(みこしもりちょう)は、神輿守小島連合会で、諏訪、住吉、森崎の3基を担いで、同神社からお旅所(元船町)へ渡る。
 近年は小屋入り後、みこしの重さを想定した砂袋を載せるなどして稽古を重ねて本番を迎える神輿守町も増えているが、同連合会の担ぎ手は、昔ながらのやり方を引き継ぎ、稽古なしで「お下り」「お上り」に臨む“ぶっつけ本番”スタイル。総宰領の陳野和夫さん(64)は「担ぎ手の肩の高さが合わないと力が出ない。何より肩揃(そろ)えが重要で、本番前にもう一度、担ぎ手の肩の高さが同じになるよう並び順など肩揃えをして臨む」と気合十分だ。
 同神社の吉村政德宮司も「輿」に乗り、みこし行列にお供する。近年は長らく宮司が馬に乗って行列に参加していたが、落馬事故がたびたび発生し、安全確保や伝統継承などの理由から昨年、同社が車輪付きの輿を製作した。宮田文嗣禰宜は「江戸時代の絵巻には、宮司が輿に乗る姿が描かれている。当時の再現で伝統をつなぐ」と語る。
 一方、お旅所では露店の準備が進んでいる。暴力のない明るいお宮日推進協議会によると、2000年代、最大552あった出店数は、その後減少傾向となり新型コロナ禍で中止した3年間を経て昨年はピーク時から3割減の362店まで落ち込んだ。とはいえ、市中心部以外の人々にとって「長崎くんちといえば露店」との声もあり、楽しみにしている人は多い。
 そんな中、390年の節目に、市民による新たな取り組みもある。重症心身障害児にもくんちを楽しんでもらおうと、7~9日の3日間、県庁の一画に、子ども用の休憩場所を設ける。椛島町で「太皷山(コッコデショ)」の担ぎ手経験がある企画者の安永年軌さん(34)は「健常者も障害者も楽しめる祭りであってほしい」と話している。