「社会的養護」経験者の支援 長崎の拠点が開設1年 養護施設とも連携、つながりと安心得る場に

長崎新聞 2025/01/14 [11:30] 公開

「居場所」を運営する支援コーディネーターの村田莉紗さん(右)と宮崎さん=長崎市浜町

「居場所」を運営する支援コーディネーターの村田莉紗さん(右)と宮崎さん=長崎市浜町

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児童養護施設や里親家庭で育った「社会的養護」経験者の自立支援で、保護を離れた「ケアリーバー」らが気軽に立ち寄れる場をつくろうと、長崎市のNPO法人心澄(しんじょう)(宮本鷹明理事長)が同市浜町に「居場所」を開設して今月で1年を迎えた。昨年1年間で延べ約400人が利用。施設職員以外の大人や同世代との交流を通し、社会とつながり、安心を得られる場になっている。

 「その髪の色いい感じだね」「あのドラマに出ている俳優さんみたい」。今月9日夕、「居場所」には20歳前後の若者6人が顔を出し、運営スタッフと談笑したり、スマホのゲームをしたり、思い思いに過ごしていた。大学生の女性(19)は「知り合いも増え、大学のリポートの書き方を教えてもらったり、年上の人と気軽に話せる」と定期的に利用している。

 社会的養護の対象は原則18歳まで。ケアリーバーは公的な援助が途切れ、頼る相手がおらず、困窮や孤立に陥りやすいとされる。このため国は昨年4月施行の改正児童福祉法で自立支援を受けられる年齢制限を撤廃。社会的養護自立支援拠点事業(アフターケア事業)で、都道府県や政令市が直営か民間団体に委託し、当事者同士が交流する場の提供や生活相談支援などに取り組む。昨年10月1日時点で長崎県を含め全国56カ所で実施されている。

 県は昨年度、県子ども・若者総合相談センター「ゆめおす」などを運営する心澄に前身の事業を委託。心澄は昨年1月、当事者が立ち寄りやすい長崎市中心部のビル1階に「居場所」を県内で初めて開設した。独自にカフェも併設する。

 運営に携わる社会福祉士ら職員4人が県内11ある児童養護施設で、退所予定者がいる施設を訪問。本人の希望に応じて継続支援計画を策定し、適切な金銭管理など生活スキル向上をサポートする。ひきこもり傾向など必要に応じて「ゆめおす」や、法人が運営する就労支援窓口「地域若者サポートステーション」につなげる。寝泊まりする場所がないなど緊急対応で法人のシェアホームで一時的に受け入れることもある。

 その中で「居場所」は交流や情報提供の場。生活相談支援員の宮崎聖乃さんは「困っていることに気付いていない当事者もいる。声をかけて状況を確認できるのは大きい」とする。

 担当職員を配置するなど自立支援に取り組む児童養護施設側も「居場所」の存在を評価。マリア園(同市)の赤岩保博施設長は「施設で生活する子たちは一般家庭に比べ身近で頼れる大人の存在が少ない。施設が『実家』だとすれば、『居場所』は親に話したくないことも話せる大人がいて、安心して過ごせる場になっている」と語る。

 宮本理事長は「養護施設の人たちとのつながりが強くなったのが一番のメリット。施設の内と外で同じ思いを持って引き続き連携していけたら」と話した。