今年2月、長崎県五島市に国から1通の通知が届いた。有人国境離島法に基づく輸送コスト支援事業で国の年度予算がオーバーし、国負担分の一部を交付できない、という内容。「こんなことは初めてだ」。報告を受けた市幹部は青ざめた。
輸送支援は同法に基づく「地域社会の維持に関する施策」の一つ。条件が不利な離島の農林水産業の振興を図るため、農・漁協、業者などが農水産品の出荷や原材料の仕入れなどをする際、離島-本土間の対象輸送経費の最大8割を国(6割)や県と自治体(各1割)で補助する仕組みだ。
不足となったのは市が昨年度、輸送支援で国の財政措置を見込んでいた約2億8千万円のうちの約1330万円。不足分は市が負担するか、事業者に自腹を切ってもらうか-。緊急庁内会議の結果、市が補助することにした。「事業者を守るための苦渋の決断だった」。市幹部は振り返る。
国境に接する離島の人口維持や保全を目的とした同法は2017年施行の時限立法。「地域社会の維持に関する施策」として輸送支援のほか▽航路・航空路運賃の低廉化▽雇用機会拡充-などに交付措置が講じられ、本県では7市町が該当する。
県によると、雇用機会拡充では17~23年度、7市町で1534人の新規雇用を創出。法施行前は離島5市町で年間計約1千人だった「社会減」が600人前後まで改善し、五島市では転入者が転出者を上回る「社会増」を3度を達成するなど一定の効果が出ている。
半面、支援施策の活用拡大に加え、燃油価格や物価上昇、コロナ禍後の人流回復で国の予算不足が生じている。輸送支援では昨年度、対馬、西海両市でも不足分を補助。一方、新上五島町は国費減額分約1100万円の補助はしなかった。「なし崩しになれば制度が崩れてしまう。国は補助率を守ってほしい」。石田信明町長は懸念を口にする。
「地域社会の維持に関する施策」で、国の交付金の当初予算額は法施行以来、年50億円で据え置かれたまま。補正は組まれるが、それでもニーズに十分応えられていないのが現状だ。
同法は27年3月末に期限を迎える。「支援制度が延長されなければ死活問題だ」。燃料費や輸送費の上昇に苦しむ対馬市の漁協関係者は危機感をあらわ。新上五島町の水産業者は「国の支援は有難い」としつつ、こう訴える。「予算不足で交付金が削減されるのは困る。物価高騰を考慮し、支援の継続と拡大をしてほしい」
同法の改正・延長の行方に、関係者の間では切実な願いと不安が入り交じる。
輸送支援は同法に基づく「地域社会の維持に関する施策」の一つ。条件が不利な離島の農林水産業の振興を図るため、農・漁協、業者などが農水産品の出荷や原材料の仕入れなどをする際、離島-本土間の対象輸送経費の最大8割を国(6割)や県と自治体(各1割)で補助する仕組みだ。
不足となったのは市が昨年度、輸送支援で国の財政措置を見込んでいた約2億8千万円のうちの約1330万円。不足分は市が負担するか、事業者に自腹を切ってもらうか-。緊急庁内会議の結果、市が補助することにした。「事業者を守るための苦渋の決断だった」。市幹部は振り返る。
国境に接する離島の人口維持や保全を目的とした同法は2017年施行の時限立法。「地域社会の維持に関する施策」として輸送支援のほか▽航路・航空路運賃の低廉化▽雇用機会拡充-などに交付措置が講じられ、本県では7市町が該当する。
県によると、雇用機会拡充では17~23年度、7市町で1534人の新規雇用を創出。法施行前は離島5市町で年間計約1千人だった「社会減」が600人前後まで改善し、五島市では転入者が転出者を上回る「社会増」を3度を達成するなど一定の効果が出ている。
半面、支援施策の活用拡大に加え、燃油価格や物価上昇、コロナ禍後の人流回復で国の予算不足が生じている。輸送支援では昨年度、対馬、西海両市でも不足分を補助。一方、新上五島町は国費減額分約1100万円の補助はしなかった。「なし崩しになれば制度が崩れてしまう。国は補助率を守ってほしい」。石田信明町長は懸念を口にする。
「地域社会の維持に関する施策」で、国の交付金の当初予算額は法施行以来、年50億円で据え置かれたまま。補正は組まれるが、それでもニーズに十分応えられていないのが現状だ。
同法は27年3月末に期限を迎える。「支援制度が延長されなければ死活問題だ」。燃料費や輸送費の上昇に苦しむ対馬市の漁協関係者は危機感をあらわ。新上五島町の水産業者は「国の支援は有難い」としつつ、こう訴える。「予算不足で交付金が削減されるのは困る。物価高騰を考慮し、支援の継続と拡大をしてほしい」
同法の改正・延長の行方に、関係者の間では切実な願いと不安が入り交じる。