結核菌の増殖阻害 化合物発見 長崎大研究グループ 新薬開発に期待

2024/09/21 [12:46] 公開

長崎大熱帯医学研究所の稲岡健ダニエル教授と同大熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授の研究グループが、結核菌の増殖に必要な酵素の働きを阻害する化合物を複数発見した。既存の治療薬との併用による相乗効果も認められ、結核の新たな治療薬開発につながるとしている。
 同大が17日に発表した。ニュージーランド・オタゴ大のグレゴリー・M・クック教授を中心とする米国、中国、南アフリカとの国際共同研究により、明らかにした。
 研究では、結核菌の増殖と生存に必要不可欠なコハク酸脱水酵素(SDH)に着目。SDHの働きを阻害する薬剤は、次世代の結核抗菌薬として有望視されているが未解明な部分が多く、結核菌のSDHのみに作用する薬剤の発見が課題だった。
 長崎大の研究グループは、多数の化合物の情報が収録された公開のデータベースから結核菌のSDHに作用するものを見つける方法を開発し、該当する化合物を抽出。結果を基に人工知能(AI)技術を組み合わせ、低濃度で結核菌SDHの働きを阻害する化合物を複数発見した。
 さらに実際に結核菌を使った試験では、この化合物が結核菌の増殖を抑えるだけでなく、既存の薬剤との併用により殺菌作用の相乗効果があり、薬剤耐性菌の出現を抑制することも分かった。この研究により、既存の抗結核薬剤とは異なるメカニズムでの治療薬の開発が期待される。