「コロナ11波、危ない状況」 長崎大・泉川教授 医療機関で陽性者急増、入院延期のケースも

2024/07/20 [12:30] 公開

新型コロナの感染者増に伴う県内医療機関の厳しい状況を訴える泉川教授=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

新型コロナの感染者増に伴う県内医療機関の厳しい状況を訴える泉川教授=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

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長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授が19日、取材に応じ、新型コロナウイルスの感染者が増えている状況について「流行第11波に入っている」との認識を示した。県内の医療機関で入院患者や医療スタッフの陽性者も急増しているとして「非常に危ない状況」と強調した。
 泉川氏が県内21の主要な医療機関に確認したところ、同日時点で入院患者の陽性者が少なくとも253人、医療スタッフは110人以上いることが分かった。10人を超える院内クラスター(感染者集団)の発生や、病室の確保が難しいため、治療が必要な患者の入院を延期したといった報告もあったという。
 泉川氏は「スタッフの疲労はピークに達していると切実な声が寄せられている。病院の一歩外に出ると何もないように見えるが、こうした中の状況を分かってもらいたい」と訴えた。
 県が18日に公表した感染症発生動向調査速報によると、県内70の定点医療機関で8~14日の新型コロナ感染者は1568人(前週比685人増)、1定点当たりの報告数は22・40人(同9・79人増)。5週連続で増え、今年最多となった。昨年5月に法律上の「5類」に引き下げられて以降、感染者が最も多かった同7月下旬(2120人、1定点当たりの報告数30・29人)の水準に迫る。
 泉川氏は「過去4年間の経験からいくと、人が動く夏休みは陽性者が増える。今後も増え続けることは間違いないだろう」と見方を示した。
 全国で現在流行する「KP・3」と呼ばれる変異株については「感染力や伝播力が強く、過去の感染やワクチンで得た免疫から逃れやすいことが分かっている」と説明。県内でも置き換わっているとの見解を示し、高齢者や基礎疾患がある人などの重症化リスクを指摘した。
 その上で「このまま陽性者が増え続けると、必要な治療が受けられないといった影響が出てくる可能性があることを知ってほしい」と理解を求めた。
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 県医師会は「発熱や風邪の症状などがある場合は受診する前に、まずはかかりつけ医や最寄りの診療所に電話してもらいたい」と呼びかけている。