『連絡所』はどこ? 政治家の看板、長崎県内の至るところに 実体なくても見逃され

2024/07/14 [11:00] 公開

売り地に複数立てられた政治家の看板、高さが公選法の規定を超えている=6月16日撮影、長崎市西海町(画像の一部を加工しています)

売り地に複数立てられた政治家の看板、高さが公選法の規定を超えている=6月16日撮影、長崎市西海町(画像の一部を加工しています)

  • 売り地に複数立てられた政治家の看板、高さが公選法の規定を超えている=6月16日撮影、長崎市西海町(画像の一部を加工しています)
  • 周囲に建物のない国道沿いの茂みに立てられた県議の看板、有効期限も切れていた=6月16日撮影、長崎市長浦町(画像の一部を加工しています)
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政治家の名前と一緒に「連絡所」などと書いた立て看板は、長崎県内の至るところにある。長崎新聞の双方向情報窓口「ナガサキポスト」に「空き地や駐車場など事務所の実体がない場所での掲示が横行している」との投稿が寄せられた。県内を調べると確かに、売り地や国道沿いの茂みなど、疑問視されてもおかしくない場所に多数の看板が存在していた。連絡所や事務所の実体がないことについて、識者は「公職選挙法違反ではあるが、形式犯であり、見逃されている側面がある」と指摘する。

 長崎市中心部で「連絡所」と書いた看板を掲げるある石材店。店主に話を聞くと「連絡を取れる関係ではない。頼まれたから置いているだけ」とあっさり明かした。
 同市西海町の国道206号沿いでは「売り地」とされた土地の外柵に4人の看板が設置されていた。看板は木製の脚が付いており、規定とされる縦150センチを優に超えている。建物はあるが敷地内に入ることはできず、どこに連絡を取ればいいか全く分からない。
 ほかにも、同市内で現職県議の少し古びた「後援会事務所」の看板を発見。車を降りて辺りを歩いたが建物すら見つからない。看板に貼っている県選挙管理委員会が交付する証票プレートには「平成31年6月まで有効」-。期限が5年以上切れていた。
 総務省によると、「事務所」は政治活動のための事務などに使用する場所で、「連絡所」は事務所に案内できたり、連絡を取ることができたりする場所としている。厳密には違反すれば2年以下の禁錮か50万円以下の罰金。ただ、県選管は「直ちに違法とすることは少なく、まずは注意喚起をする」。改善がなければ撤去命令を出すこともあるという。
 売り地に看板を掲げていた県議に取材すると「不思議に思う気持ちは分かるが、顔と名前を売るための看板だと認識している。指導があれば対応する」と話した。
 違反が常態化している現状について、公選法に詳しい日本大学法学部専任講師の安野修右さんは「少人数体制の自治体選管が“実体”を一つ一つ確認することは現実的に厳しい」と分析。「顔と名前を売るために置いて『連絡所』とはしらじらしい」としつつも、看板に関しては海外に比べ日本は厳しい規定だとして「議員立法である以上守るべきだが、取り締まりを厳しくしない方向に変えていくのも一案」との見方を示した。
 現在、県選管が衆院議員(小選挙区)、参院議員(長崎選挙区)、知事、県議の候補者や後援団体の看板に交付している証票は約800あるが、本庁で対応できる職員は4人。人員の問題で積極的な調査はしていない。「情報があれば確認して可能な範囲で対応する。政治家たちは、ルールを守ってきれいな政治活動をしてほしい」とした。