新年度がスタートしました。期待と不安が入り交じる時期。自分の時間も大切にしながら乗り切ってまいりましょう。そこで、みなさんがリラックスして楽しめるジャズをセレクトしてみました。1960年に録音されたサックス奏者チャーリー・ラウズの名作「ヤー!」です。
ラウズといえば、ジャズ史に金字塔を刻んだ鬼才ピアニスト、セロニアス・モンクとの共同作業が思い浮かびますが、この盤ではラウズが自身の音楽性を追求しており、ファンにとっても興味深い1作です。
ラウズはこの作品の1年くらい前から“上司”モンクと共同作業を開始しており、それは1970年まで続きます。鬼才との共同作業は通常のジャズミュージシャンとの“セッション感覚”では到底処理できない大変難しい作業でした。
それはモンク特有のエキセントリックで難解なメロディーやリズムに起因しています。モンクから提示されるメロディー、ハーモニー、リズムを、その場で的確にモンクの考える音楽的思想に近づけなければならないのです。そこにはラウズの個性はほとんど入っていないと断言していいと思います。
モンクのドキュメンタリー映画「ストレート・ノー・チェイサー」を見れば分かるかと思いますが、モンクは気難しく、誰とでも演奏できるという感じの人物ではありません。モンクにとってもラウズは稀有(けう)な存在で、“伴侶”に近いサックス奏者だったと思われます。ラウズは長きにわたりモンクの完璧な理解者であり、また崇高なモンク・ミュージックの構築をも担っていました。
かつてモンクのバンドには、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンといった後にジャズ界の巨人となったサックス奏者も在籍していました。しかし、才覚あふれる両人でさえもモンクの世界観構築に貢献するどころか、モンク・ミュージックを学んだにすぎませんでした。
そんなラウズがモンクの元から少しの時間解き放たれ、ラウズ自身が心置きなくブロウしたアルバムが今作です。内容はほぼ有名ジャズスタンダードで占められ、しかもサックスとピアノトリオというシンプルな4人編成。ラウズのサックスが堪能できる魅力的な作品です。
新年度にある意味考えさせられるエピソードのあるアルバムですが、心身ともにリラックスして楽しめる作品ですので、ぜひ聴いてみてください。(この作品は、CD以外にも音楽配信サービスでもお聴きになれますのでぜひお手にとってみてください)
(ジャズピアニスト、長崎市出身)
ラウズといえば、ジャズ史に金字塔を刻んだ鬼才ピアニスト、セロニアス・モンクとの共同作業が思い浮かびますが、この盤ではラウズが自身の音楽性を追求しており、ファンにとっても興味深い1作です。
ラウズはこの作品の1年くらい前から“上司”モンクと共同作業を開始しており、それは1970年まで続きます。鬼才との共同作業は通常のジャズミュージシャンとの“セッション感覚”では到底処理できない大変難しい作業でした。
それはモンク特有のエキセントリックで難解なメロディーやリズムに起因しています。モンクから提示されるメロディー、ハーモニー、リズムを、その場で的確にモンクの考える音楽的思想に近づけなければならないのです。そこにはラウズの個性はほとんど入っていないと断言していいと思います。
モンクのドキュメンタリー映画「ストレート・ノー・チェイサー」を見れば分かるかと思いますが、モンクは気難しく、誰とでも演奏できるという感じの人物ではありません。モンクにとってもラウズは稀有(けう)な存在で、“伴侶”に近いサックス奏者だったと思われます。ラウズは長きにわたりモンクの完璧な理解者であり、また崇高なモンク・ミュージックの構築をも担っていました。
かつてモンクのバンドには、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンといった後にジャズ界の巨人となったサックス奏者も在籍していました。しかし、才覚あふれる両人でさえもモンクの世界観構築に貢献するどころか、モンク・ミュージックを学んだにすぎませんでした。
そんなラウズがモンクの元から少しの時間解き放たれ、ラウズ自身が心置きなくブロウしたアルバムが今作です。内容はほぼ有名ジャズスタンダードで占められ、しかもサックスとピアノトリオというシンプルな4人編成。ラウズのサックスが堪能できる魅力的な作品です。
新年度にある意味考えさせられるエピソードのあるアルバムですが、心身ともにリラックスして楽しめる作品ですので、ぜひ聴いてみてください。(この作品は、CD以外にも音楽配信サービスでもお聴きになれますのでぜひお手にとってみてください)
(ジャズピアニスト、長崎市出身)