半導体需要の取り込み加速…供給網の構築支援、最大規模に<2025年度・長崎県予算案から①産業振興>

長崎新聞 2025/02/25 [10:30] 公開

県と東彼杵町が工業団地の整備を計画する土地=東彼杵町三根郷

県と東彼杵町が工業団地の整備を計画する土地=東彼杵町三根郷

  • 県と東彼杵町が工業団地の整備を計画する土地=東彼杵町三根郷
  • 主な半導体戦略策定道県の製造品出荷額・事業所数
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長崎県の2025年度当初予算案の審議が、県議会で本格化する。最終年度を迎える県総合計画の総仕上げとなる予算案を、産業振興、こども、教育、農水産業のテーマで点検する。

 成長著しい半導体産業のサプライチェーン(供給網)構築支援として、県は25年度当初予算案に、1億1千万円を盛り込んだ。半導体に特化した予算としては過去最大規模。台湾積体電路製造(TSMC)の進出で企業集積が進む熊本県をはじめ、九州各地で投資が活発化する中、着実に需要を取り込むために施策を加速する。

 本県の半導体関連産業の製造品出荷額は3200億円規模で、すでに造船業に次ぐ基幹産業に成長。県央でのソニーグループやSUMCOの事業拡大、京セラの工場建設など今後の発展も見込まれる。さらに県は、東彼東彼杵町と連携し、十分な敷地と水量を備えた大規模工業団地の整備を計画。雇用や発注などの波及効果が高い「アンカー企業」の誘致を目指す。

 今月公表した「県半導体産業成長戦略」は、30年の売上高1兆206億円、雇用者数8860人を目標に掲げた。県は、造船業で培った高度な金属加工技術を生かせる半導体製造装置の大手メーカーをアンカー企業として誘致したい考えだ。

 だが、大手からの仕事を受注できる態勢が地元に整っていなければ、需要を取りこぼす恐れがある。23年経済構造実態調査を基にした同戦略の分析によると、本県の半導体産業は出荷額ベースでは半導体戦略を策定している他の道県と比較しても一定規模を有する一方で、事業所数は少なく、サプライチェーンの広がりを欠いている(グラフ参照)。大手メーカー誘致と連動した地元製造業者の新規参入が鍵を握る。

 高い技術力を有する本県の製造業者だが、半導体分野への参入には量産体制構築や品質管理の面で新たな設備、人材育成が必要となる。そこで25年度予算案では、大手からの受注獲得に向けた県内企業の設備投資を集中的に支援。同時に、専門知識・技術を習得する社員のリスキリング(学び直し)の受講料補助などにも力を入れる。

 企業の期待も大きい。精密空調装置を製造する伸和コントロールズ九州事業所(大村市)は4月から、新工場建設に着手。27年の操業開始に向け、サプライヤーの確保が課題だ。大坪貴幸執行役員は「できる限り地場の企業と仕事したい思いがある。行政には協力企業とのマッチングに期待している」と話す。

 産学官組織「ながさき半導体ネットワーク」会長の木村正成・長崎大総合生産科学域長は「サプライチェーン構築と人材育成は必要な“足場固め”。しっかり動いていると感じる」と県の予算措置を評価。「今後の課題は水。浄水技術開発を含め、官学でバックアップ体制を整える必要がある」と指摘する。