今後の地域医療に不安 佐世保・杏林病院が破産申請 救急告示病院の役目も

2024/06/27 [11:00] 公開

破産手続きを開始した杏林病院=佐世保市

破産手続きを開始した杏林病院=佐世保市

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長崎県佐世保市早苗町の医療法人篤信会「杏林病院」が多額の負債を抱え破産申請し、住民から今後の地域医療に対する不安の声が上がっている。新規外来受け付けは申請した20日に停止。現在、入院患者の転院と、通院患者を他の医療機関へ紹介する転医への対応を進めている。救急患者に対応する救急告示病院の役目も担っていただけに、早岐、広田地区を中心にした市東部エリアの医療体制への影響が懸念されている。

 同病院は1974年に個人経営病院として開業し、2017年に法人化。内科、外科、呼吸器科など多くの診療科目があり、病床数は180床。破産申請時は約90人が入院していた。
 負債総額は約11億7千万円。帝国データバンクによると、2020年3月期の売上高は約19億1800万円あったが、23年3月期は約14億8100万円に落ち込み、赤字を計上。24年3月期には債務超過に陥っていた。
 現在、医師会や関係機関、他の医療機関の協力を得て、入院患者の転院などを進めている。管財人は、転院や転医への対応を来月末までに完了させたいとしている。
 東部エリアでは大きな規模の病院だったため、周辺住民の不安は強い。住民の一人は「いろんな疾患の受診ができ、高齢化社会の中で必要な病院だった。(なくなるのは)重大な問題」と話した。父親が通院していたという男性は、今後の対応を聞くために来院。「主治医の判断を仰ぎながら、希望にかなう転医先への紹介状を出すという説明だった。スムーズな対応をお願いしたい」。75歳の女性は「近くにあって安心して通っていたが、救急時にどこに行けばいいか心配」と口にした。
 市医療政策課によると、同病院は市内に12ある救急告示病院の一つ。休日や夜間の救急患者に当番制で対応する二次救急輪番病院にも指定されている。同課は「東部地区を中心とした地域医療を支えていた。当番制の対応など、限られた医療資源の中で、早急に医療体制の構築に向けた検討が必要」としている。
 市医師会は、円滑な転院ができるよう、市や各病院と情報を共有している。横山一章会長は「外来患者の転医については臨時班長会を開き、各地区において協力をお願いした。病院スタッフの就職についても、ハローワークや当会の職業紹介所への登録を促し、サポートしていきたい」と支援する姿勢を強調した。