アスベスト(石綿)を扱う工場で働いて健康被害を受けた被害者への賠償を巡り、国側が被害者側に周知をすることなく、約6年前に救済範囲を狭める運用変更を行っていたことが16日、厚生労働省への取材で分かった。同省は、影響人数を調査中としている。
厚労省によると、石綿被害で国の賠償責任を認めた2014年の「泉南アスベスト訴訟」最高裁判決を受け、国は一定の要件を満たした元労働者らと和解している。
賠償請求権が消滅する「除斥期間」(20年)の起算点について、当初は都道府県の労働局が健康被害を認める決定をした時としていた。
だが19年に「石綿被害の発症が認められる時」に早めた。この年、石綿被害に関し、賠償金の支払いの遅れに伴って支払う「遅延損害金」を巡る訴訟で、起算点を「診断日」とする判決が出たことを理由に変更したと説明している。除斥期間の起算点が早まれば、請求権が消える人がいるが、厚労省は周知をしなかった。