長崎県北松佐々町が現庁舎近くに建設を進めていた新庁舎が完成し、供用開始まで1カ月を切った。建設を巡っては、町と設計業者、施行業者間の連携不足などで完成予定が2回延期され、約1年も遅延。遅れた原因については町議会も究明に動いたものの、いまだはっきりしておらず「うやむやのまま」(町議の一人)でスタートを切ることになりそうだ。
新庁舎の建設が持ち上がったのは2018年。現庁舎本館は建設から半世紀以上が経ち、耐震性が低いため、古庄剛町長が議会で「建て替えの方向が望ましい」との見解を示して建設に動き出した。
ところが、具体的な動きに入ると受難が続く。始まりは22年8月に実施した施行業者を決める入札。ロシアのウクライナ侵攻による急激な物価高騰を懸念し、条件付きの一般競争入札で臨んだものの、参加した全業者が予定価格を超えたため不落に。約4カ月後の2回目の入札では、県内の大手建設会社などの特定建設工事共同企業体(JV)が約20億円(税込み)で落札したが、ここから庁舎の設計を手がけた東京の設計事務所との“トラブル”が続くことになる。
町によると、町は設計事務所に予算内で収まるよう依頼したが、設計事務所は約6億円増の26億円を提示。慌てた町は建設費を削減するため断熱材の厚みを薄く変更するなどして乗り切ることを考えた。ところが、こうした手法では設計基準を満たさないことが分かり、工事計画の変更などで時間を要することになった。
工事に着手すると今度は設計事務所とJVが対立。新庁舎のガラス窓に使うサッシを巡り、図面の精度や提出時期で主張が食い違い、双方は「JVの下請けからまったく図面が提出されなかった」「設計事務所の承認をもらえれば工期は間に合った」と応酬。設計事務所の矛先は町の事務処理にも向き「承認が遅かった」と批判が続いた。
こうした対立は屋根や屋上の防水工事など他の工事にも影響し、完成遅れにつながることになる。工事期間が延びたことで建設費も余計にかかることになり、JV落札時から約1億2千万円膨らんだ。町幹部の一人は「すべての対応が後手後手に回り、連携不足が相まって遅延してしまった」と分析する。
町議会も原因究明を図ろうと調査特別委員会の中で議論したものの、業者側の聞き取りなどはせず、真相にはたどり着けなかった。正副委員長は「委員会の意見をまとめきれなかった」との理由で原因究明を投げ出すように辞任。24年10月の定例会本会議では全委員が辞職して特別委を廃止する事態となった。
同町羽須和免の無職、松田征男さん(84)は「議員が10人もいるのに原因究明できないとは情けない」と指摘する。その上で「町執行部は襟を正して再出発してほしい」と求めた。
同町を巡っては、古庄町長が3月、官製談合防止法違反などの疑いで逮捕、起訴され、町政の混乱が続く。新庁舎はトップ不在のまま、5月7日に供用が始まる。
新庁舎の建設が持ち上がったのは2018年。現庁舎本館は建設から半世紀以上が経ち、耐震性が低いため、古庄剛町長が議会で「建て替えの方向が望ましい」との見解を示して建設に動き出した。
ところが、具体的な動きに入ると受難が続く。始まりは22年8月に実施した施行業者を決める入札。ロシアのウクライナ侵攻による急激な物価高騰を懸念し、条件付きの一般競争入札で臨んだものの、参加した全業者が予定価格を超えたため不落に。約4カ月後の2回目の入札では、県内の大手建設会社などの特定建設工事共同企業体(JV)が約20億円(税込み)で落札したが、ここから庁舎の設計を手がけた東京の設計事務所との“トラブル”が続くことになる。
町によると、町は設計事務所に予算内で収まるよう依頼したが、設計事務所は約6億円増の26億円を提示。慌てた町は建設費を削減するため断熱材の厚みを薄く変更するなどして乗り切ることを考えた。ところが、こうした手法では設計基準を満たさないことが分かり、工事計画の変更などで時間を要することになった。
工事に着手すると今度は設計事務所とJVが対立。新庁舎のガラス窓に使うサッシを巡り、図面の精度や提出時期で主張が食い違い、双方は「JVの下請けからまったく図面が提出されなかった」「設計事務所の承認をもらえれば工期は間に合った」と応酬。設計事務所の矛先は町の事務処理にも向き「承認が遅かった」と批判が続いた。
こうした対立は屋根や屋上の防水工事など他の工事にも影響し、完成遅れにつながることになる。工事期間が延びたことで建設費も余計にかかることになり、JV落札時から約1億2千万円膨らんだ。町幹部の一人は「すべての対応が後手後手に回り、連携不足が相まって遅延してしまった」と分析する。
町議会も原因究明を図ろうと調査特別委員会の中で議論したものの、業者側の聞き取りなどはせず、真相にはたどり着けなかった。正副委員長は「委員会の意見をまとめきれなかった」との理由で原因究明を投げ出すように辞任。24年10月の定例会本会議では全委員が辞職して特別委を廃止する事態となった。
同町羽須和免の無職、松田征男さん(84)は「議員が10人もいるのに原因究明できないとは情けない」と指摘する。その上で「町執行部は襟を正して再出発してほしい」と求めた。
同町を巡っては、古庄町長が3月、官製談合防止法違反などの疑いで逮捕、起訴され、町政の混乱が続く。新庁舎はトップ不在のまま、5月7日に供用が始まる。