瀕死の被爆者救護した元衛生兵 「忘れられない少女」テーマのアニメ完成 長崎・大村でお披露目

2024/06/30 [10:26] 公開

「忘れられないきみへ」より、少女が救護所を訪ねるシーン(松原の救護列車を伝える会提供)

「忘れられないきみへ」より、少女が救護所を訪ねるシーン(松原の救護列車を伝える会提供)

  • 「忘れられないきみへ」より、少女が救護所を訪ねるシーン(松原の救護列車を伝える会提供)
  • 全校児童や保護者らが集まったお披露目会=大村市松原本町、松原小
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長崎への原爆投下後、瀕死(ひんし)の被爆者が救援列車で大村市松原地区へ運ばれた歴史を継承する「松原の救護列車を伝える会」のアニメーション「忘れられないきみへ」が完成した。被爆者の救護に当たった元衛生兵の福地勝美さん=2013年に死去=が、松原国民学校(現在の市立松原小)の救護所で出会った少女をテーマにしている。お披露目会が29日、同校であった。
 「あなたのことが、私は何十年たった今でも忘れることができません」。79年前に地元で起きた悲劇を描いた映像とナレーションが流れると、子どもたちは息をのんで見つめていた。
 同会によると、福地さんは原爆投下後、衛生兵として松原の救護所で勤務。少女は小学2年生くらいで、母親を捜しに救護所へやって来た。再会はかなったものの、母親はそのまま息を引き取った。その後、少女の行方は分からなくなったという。福地さんは亡くなるまで、少女のことを気にかけていた。
 松原地区の住民でつくる同会は、福地さんが生前語った体験を朗読劇にして披露している。福地さんの心残りに報いようと、もし今生きていれば80代と推定される少女を探すことも目的の一つに、アニメーション制作に乗り出した。
 「忘れられないきみへ」は、依頼を受けた武蔵野美術大の学生3人が昨年8月から制作に取り組んだ。上映時間は4分半。福地さんが救護所で見た光景が、史料や想像を交えて描かれている。
 お披露目会には全校児童や保護者、福地さんの遺族など約250人が参加。制作した学生らもオンラインで加わった。上映後、同校6年のカイリー友姫さんは「松原の人たちが救護した姿を見て、困っている人を助けたいと思った。(救援列車を)いろいろな人に伝えたい」と感想を述べた。
 福地さんの次男、邦彦さん(66)=福岡県大野城市=は「映像になっていて感動した。本当にありがたい。父の子で良かったと思った」と語った。田口哲也会長(55)は「戦争はいけないと(子どもたちにも)分かってもらえた。アニメーションを作って良かった」と話した。動画はユーチューブでの公開も検討している。