寄付は「大石氏応援」と認識 長崎県知事の政治資金報告書問題 識者は「外形的に迂回献金」

2024/07/08 [10:35] 公開

2022年 知事選を巡る資金の流れ

2022年 知事選を巡る資金の流れ

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長崎県の大石賢吾知事の後援会が2022年政治資金収支報告書に県議の後援会から286万円を借り受けたと記載している問題で、県議側に寄付した複数の医療法人の関係者が、寄付は「大石氏の応援」と認識していたことが、関係者への取材で7日までに分かった。政治資金規正法は政治家個人に対する企業・団体の寄付を禁じており、寄付が可能な政党支部を通した「知事選の資金集め」を裏付ける証言。識者は「外形的に迂回(うかい)献金」と指摘している。
 22年の収支報告書によると、同年2月の知事選で大石陣営の選対本部長だった県議が代表の政党支部は、知事選までに医療法人など9団体から計286万円の寄付を受け、同2月18日に県議自らの後援会に同額を寄付した。同日に大石氏の後援会が同額を借り、同年12月に利息分を含め返済。一連の流れは「知事選の資金集め」(選対関係者)とされていた。
 これについて、複数の医療法人の関係者は取材に「県議と面識はなかった」と証言。知事選で医療系団体は大石氏を推薦しており、関係者の一人は「(団体側から)大石氏を応援するための寄付の要請があった。指定された(政党支部の)口座に振り込んだだけ」と明かした。
 一方、選対本部長だった県議は取材に「知事選は候補者(大石氏)と行動し、街頭演説や情報発信などの外向けの仕事をしていた。選挙資金のことは他に任せており、迂回献金の認識はない」としている。
 一連の流れについて、岩井奉信日本大名誉教授(政治学)は「貸し借りは違法ではないが、規正法の理念を逸脱している。迂回献金を意図していれば違法行為に当たる」と指摘した。
 県議との金銭の貸し借りについて、先月24日の県議会で政治倫理上の問題を指摘された大石氏は「誤解を与えかねない」として収支報告書を訂正する考えを表明。だが、同28日には後援会で不審な出金があったとして訂正保留を発表した。詳細は「確認している」とし、具体的な説明を避けている。