長崎原爆資料館の展示リニューアル 市民ワークショップに参加 年代関係なく対話、平和の一歩【ルポ】

2024/08/31 [12:00] 公開

WSで記者が入った班。多様な意見が出され、白地図にびっしりとアイデアが書き込まれた=長崎原爆資料館

WSで記者が入った班。多様な意見が出され、白地図にびっしりとアイデアが書き込まれた=長崎原爆資料館

  • WSで記者が入った班。多様な意見が出され、白地図にびっしりとアイデアが書き込まれた=長崎原爆資料館
  • 他の班の発表の様子。中学生から80代までの市民が活発に意見を出し合った
  • 「Cコーナー」にある世界の核弾頭数を示す模型
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2026年度以降に予定される長崎原爆資料館の展示更新に向け、市民のアイデアを出し合うワークショップ(WS)が24日あった。本紙記者(28)も参加し、幅広い世代の人たちと資料館の未来を考えた。
 WSは、長崎市が6、7月、小学生と外国人留学生を含む大学生を対象に実施。最終回の今回は、中学生以上の一般市民(定員20人)を公募した。
 24日午前。資料館の一室に集まってきたのは、中学生2人を含む12~87歳の23人。市の担当者は「実現が難しいからと発言をためらう場合もあるかもしれないが、そのアイデアがまた別のアイデアを生むこともある」と率直な意見を出すように呼びかけた。
 WSで重視するのは、戦争や核兵器に関する「Cコーナー」と、ビデオルームなどがある「Dコーナー」。市は両コーナーを中心に展示を更新する予定。
 4班に分かれ、展示室を見学。取材で何度も来たことはあるが、アイデアを考えながら見るのは案外難しい。来館者がどこを熱心に見ているか、どの展示を素通りしているかを意識すると、おのずとヒントが浮かんだ。
 同じ班のメンバーに参加の理由を聞いてみた。最年少は、市立桜馬場中1年の貝嶋逢香さん(12)。「将来の夢が平和を伝える国際ジャーナリスト。その夢につながればと参加した」
 WS会場に戻ると、各班に資料館の白地図が配られた。参加者が言葉を交わしつつ意見を書き込んでいく作業だ。「原爆投下をリアルに感じてもらうため、屋上にB29と原爆の模型をつるす」「見学を終えた来館者に(原爆からの復興をイメージした)花の種を配る」。種のアイデアは、WSのテーマ「未来志向」にも合うと思った。
 意見が活発になったのは「核兵器使用のボタン模型を設置し、来館者に『本当にあなたは押せますか』と問いかける」というアイデアが出た時。参加者それぞれがアイデアを出し、練り上げていく。年代に関係なく対話を重ねる光景こそが、“平和”をつくる第一歩ではないかと感じた。
 記者が出した意見は「核兵器の脅威を可視化するため、世界の核弾頭数を表す模型の数を実数値にする」。意見が受け入れられるか案じていたが、真剣に聞いてもらい、ほっとした。
 気付けば、班に配られた白地図にはアイデアがびっしり。各班の発表に耳を傾けると「人工知能(AI)技術で語り部の顔を被爆当時の姿にして訴えかける」「来館者の感想を共有するスペースを作る」などが印象的だった。
 コーディネーターを務めたのは、長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授。「市民とともに資料館をつくり上げる取り組みは、実はとても珍しい。WSを第一歩に長崎独自の平和のプロセスが生まれてくるのではないか」。こう結んだ言葉が胸に響いた。
 国内だけでなく世界中の人々に被爆の実相と平和の尊さを訴えるかけがえのない資料館。被爆地の一市民としてWSのアイデアが一つでも展示更新に反映されることを願い、晴れやかな気持ちで他の参加者とあいさつを交わした。「きょうはお疲れさまでした!」