平和宣言文の修正案 イスラエルを削除 ガザ攻撃、直接言及せず 長崎市起草委

2024/07/07 [10:00] 公開

平和宣言文の修正案について意見を交わした起草委員会=長崎市平野町、長崎原爆資料館

平和宣言文の修正案について意見を交わした起草委員会=長崎市平野町、長崎原爆資料館

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長崎市は6日、鈴木史朗市長が長崎原爆の日(8月9日)に読み上げる平和宣言文の修正案を、起草委員会の最終会合で示した。ウクライナ侵攻を続けるロシアに言及する一方、前回会合で示した原案に記載されていたイスラエルの国名を削り「中東における武力攻撃が深刻化」などと抽象化。同国のパレスチナ自治区ガザ攻撃については直接的な言及を避けた形で、委員からの評価は分かれた。
 原案には多くの委員の意見を踏まえ、ロシアやイスラエルの国名を挙げて政治家が核兵器使用を示唆したことを危惧する内容が盛り込まれていた。だが修正案では一転してイスラエルの国名を外したほか、核戦力を増強する中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への具体的言及も除いた。
 鈴木市長は理由について「一部の国のみ列挙することでバランスがとれず、いろいろな議論を招くことになると(核兵器廃絶など)市が本来訴えたいことがかすむという意見もあった」と説明。この日の会合でも委員から「中東ではイランとイスラエルも対立しており、あまりイスラエルだけに限定しないほうがいい」との意見が出た。
 一方で別の委員は、ガザでイスラエルによる「すさまじい人権侵害」が行われていると指摘。「戦争や核兵器が人間にもたらす痛みを知る被爆地だからこそ、人権侵害を看過せず即時停戦を求めるなど、発すべき言葉がある。それは被爆地の道義的責任にもつながるのではないか」と述べ、具体的な言及を求めた。
 さらに、近年の平和宣言は太平洋戦争末期に苛烈(かれつ)な地上戦が繰り広げられた沖縄や、2011年に起きた原発事故の被災地福島などを挙げて「連帯」を示してきたが、修正案では削除。原案段階ではいずれも明記しており、鈴木市長も前回会合で福島について「放射能被害を受けた人々への共感や連帯の意味で取り上げる」と説明していた。一方、修正案で外したことについて「連帯する対象は世界各地に多くある。より包括的に地球全体に呼びかけ、個別には入れない形にしている」とした。平和宣言は11年以降、福島に毎年言及しており、このまま外されると初めてとなる。
 起草委は被爆者や有識者ら15人で構成。市は最終会合の意見を踏まえて内容を固め、8月初旬までに骨子を公表する。