オンライン診療の機能や医療機器を搭載した巡回車両モバイルクリニックが20日、五島市役所で披露された。慢性疾患を抱え、移動が困難な高齢患者らの利便性向上が目的で、同市が長崎県内で初めて導入。看護師を乗せて患者宅などを訪れ、病院や診療所にいる主治医が診察する仕組みで、23日から玉之浦町で運行を始める。
市によると、市内の65歳以上の割合は4割を超えている。高齢者の移動手段の確保が課題で、通院が困難なお年寄りが自ら受診を控え、重症化するケースもあるという。
同事業は市や長崎大、市内の医療機関などが連携。他県で同様の事業を手がけるモネ・テクノロジーズ(東京)が協力し、看護業務を療養支援事業所せいな(同市)が担う。
主に慢性疾患を抱える人を対象に、オンライン診療の了承を得た上で、医療機関が専用の運行システムに診療日時を予約。診療用のモニターや心電図検査、エコーなどの機器を載せた車両を、市の委託を受けたタクシー会社が運行し、患者宅などに向かう。同乗した看護師が診療をサポートし、病院や診療所にいる医師がテレビ会議システムを通して診察する。
五島中央病院の専門医による診療も行えるほか、薬剤師による服薬指導の実施も目指している。
20日はお披露目会があり、野口市太郎市長が車内で、モニター越しの医師と向き合い、オンライン診療を体験。看護師が血圧を測り、遠隔聴診器を当てるなどして、医師が健康状態を聞き取った。野口市長は「画像も鮮明で、看護師もいて通院と同じような状況が再現できる。安全安心な暮らしに貢献することを期待している」と話した。訪問診療の回数軽減など医師の業務効率化も見込まれ、五島医師会の浦繁郎会長は「対面診療を補うことができ、患者のセーフティーネットの一つになる」と語った。