司法関係者の間で、3月は“解決の季節”とされているそうだ。裁判官は転勤族で、異動は一般に4月1日付。手持ちの事件には可能な限り「けり」をつけて次の任地に…という心理が働くのかもしれない▲男性同士、女性同士の結婚を認めていない民法や戸籍法の諸規定の合憲性が争われた訴訟で、今月に入って名古屋高裁と大阪高裁が相次いで判決を出した。結論はどちらも「違憲」で、高裁段階の違憲判断は5件目▲同性婚を認めないことは、憲法13条の幸福追求権の保障にも14条の「法の下の平等」にも家族に関する諸制度に「個人の尊厳」を要求する24条にも違反する…と現在の状況をこてんぱんに批判した福岡の判決は昨年の末も紹介した▲名古屋も大阪も判決は同趣旨で、名古屋高裁は〈民法の規定にある「夫婦」などを性別中立的な表現に変更すれば膨大な立法作業は要らない〉と法改正の方向まで丁寧に指南してみせた▲裁判で問われているのは、家族や夫婦の在り方だけではない。少数者の志向や主張や苦境にどう寄り添えるか、柔軟性や想像力や懐の深さがさまざまに試されているのだ▲この先は国会の出番。「違憲」の集積は見ないふりをして、最高裁の結論を待つのだとしたら、ずいぶん気の長い人が集まっている、と言わねばならない。(智)
またまた違憲判決
長崎新聞 2025/03/27 [09:45] 公開