長崎市は、市庁舎移転後の跡地(桜町)に建設予定の新たな文化施設について、座席数が千席程度のホールの整備を検討している。建設費高騰などの影響で、費用は当初想定した額のほぼ倍の約60億円を見込む。完成は2026年度以降の予定。
施設の老朽化に伴い、市は15年3月、市公会堂(魚の町)を廃止。その跡地に現在、新市庁舎の建設が進む。公会堂がなくなり、興行や文化団体などの発表の場は長崎ブリックホール(茂里町)などに集中。市は、現在不足している演劇や音楽などに利用できる芸術・専門性が高い中規模ホールを市庁舎跡地に整備する方針。
基本構想の段階では、ホールの収容人数は「千~1200席」としていたが、舞台の見やすさや過去の文化団体の利用状況などを考慮し、1、2階合わせて千席程度でオーケストラピットに対応する。収容人数としては市民会館文化ホール(977席)並みだが、音響反射板や舞台の特殊設備などを整え、機能を充実させる。
200席程度の小規模公演にも対応するリハーサル室も完備。市民が日常的に利用できる練習室や交流スペースも計画し、大規模災害時には帰宅困難者の受け入れや災害物資の集積場所としての活用も検討している。
8月30日に開かれた有識者や文化団体の関係者らでつくる文化振興審議会では、市が示した基本計画素案の一部、施設構成について話し合った。委員からは「充実した施設案になっているが、予算が通るのか心配」「市民が日常的に利用したくなる機能を明確に」などさまざまな意見が出た。
審議会委員で市演劇協会の川下祐司会長(61)によると、公会堂廃止によって会場を予約できなくなった市民団体は多かったといい、「利用者の意見を取り入れた文化施設に期待感は大きい。市民が気軽に芸術文化に触れられる施設になってほしい」と語った。
市は、秋以降にパブリックコメントを募り、本年度中に基本計画を策定する。23年度から順次、運営方針や具体的な施設構成を決め、解体工事や埋蔵文化財の調査などを経て着工。完成は26年以降になる見通し。