〈叱られている時間はたったの3分間が30分にも感じられるのに、遊園地で遊んでいる3時間はあっという間に過ぎる〉-誰にも経験があるだろう。時間の流れる速さは、心の持ち方で変化することがある▲天文学者の池内了さんの説明はこうだ。〈叱られている時は、怒っている相手の気持ちを考えたり、早く終わらないかと願ったり、と、さまざまな思いが浮かんで時間が引き延ばされているように感じ、逆に、遊園地では遊びに夢中で空白の時間が多くなっているから〉-「時間とは何か」(講談社)▲なるほど、たった8日前の事件が時々、ずいぶん遠くの出来事のように感じられるのは、彼の首相在任中のさまざまな“業績”や語録を一度に思い出しているからなのかもしれない▲「この道しかない」「こんな人たちに負けるわけにはいかない」「早く質問しろよ」…。自身の正しさを疑わず、異なる立場との摩擦や衝突を恐れない人だった▲称賛するとすれば、勇敢な政治家であり、信念の人だった-という言葉選びになるのだろう。だが、対話や相互理解の価値を説く民主主義の“教科書的な正しさ”とは懸け離れた場所に立ち続けた人でもあった▲献花台に足を運ぶ人の長い列が昨日も続いた。政府は秋に国葬を営むと決めた。異論も広がっている。(智)
事件から8日
2022/07/16 [11:00] 公開