「希望」のともしび

長崎新聞 2025/04/27 [09:45] 公開

2年生に進級してひと月足らず。大型連休を間近に控えた金曜日の朝、通い慣れた学びやで、少女は命を絶った。まだ13歳だった▲長崎市立淵中2年の女子生徒が校内で亡くなった日から、あすで30年になる。女子生徒は、同級生のいじめを告発する遺書を何通か残していた▲「毎日毎日行動と言葉でいじめられているのに誰も気付いてくれない」「これ以上はどうしても生きていけません。本当にごめんなさい」。整った筆跡。どこで、どんな思いでしたためたのか▲事件後、生徒たちは自発的に「淵中いじめ対策委員会(FPKO)」を設立した。毎年メンバーを入れ替えながら、いじめに関するアンケートに取り組み、女子生徒の命日には集会を開く。あんなにも悲しい出来事を忘れないために、二度と繰り返さないために▲現実を見れば、子どもたちの世界からいじめは消えていない。失われる命も後を絶たない。人が集団で生きていく限り避けられないもの-と誰かは言う。でもあきらめたくない。「いじめはなくせる」と信じたい▲淵中の生徒たちが時間をかけて話し合い、内容を考え、命日の集会で発表する「灯(ともしび)宣言」。いじめをなくし、人権を守り、平和な社会を実現するための決意を新たにする。温かな「灯」が子どもたちを照らし続けることを願う。(北)