長崎県の大石賢吾知事の政治資金問題を巡り、県議会は19日、非自民4会派が提出した調査特別委員会(百条委)の設置動議を否決し、真相究明を事実上見送った。大石氏は「架空貸し付け」疑惑で刑事告発されており、今後は司法の判断に委ねられる。13日に開いた臨時会見で、大石氏は「意図的な架空貸し付け」を否定したが、なぜ長期間にわたり「二重計上」に気付かなかったのか、といった疑問が残る。会見での発言などを整理した。
「架空の資金移動をでっち上げていない」。臨時会見の冒頭、大石氏はこう否定した。2022年知事選時に県医師信用組合から借りた2千万円は、当初から「どう処理されるのか全く分かっていなかった」と強調。知事選の収支報告書に計上されていると認識しないまま、自らの後援会に貸し付け、政治資金収支報告書に「誤って二重計上した」と改めて主張した。
一方、具体的な経緯は示せなかった。これまで、22年5月ごろに選挙コンサルタントから「後援会への貸し付けは可能」「法令に抵触しない」と助言を受けたと説明。選挙コンサルにも再度確認したが「(経緯は)よく覚えていなかった」とした。
大石氏は「あいまいな記憶」と前置きした上で「コンサルとは懇意にしており、『選挙はお金もかかって大変ですね』という話をした可能性もある。そういったところで(2千万円を)後援会に貸し付けても問題ないと教えてもらったと思う」と述べた。記者から「知事が2千万円を返してもらう方法を聞いたのでは」と問われると、「それはない」と断言した。
「二重計上」の疑いは昨年7月に報道で表面化。県議会は以降、全員協議会や集中審査で真相を探った。参考人の元後援会職員や元監査人は「意図的な架空貸し付け」と証言したが、大石氏は反論して意見が食い違った。選挙コンサルも参考人招致に応じず、議会での解明は行き詰まった。
これを受け自民党県連は2月、大石氏に疑問点を示して自ら説明責任を果たすよう要請。臨時会見で「おおむね回答した」と評価するが、知事選から2年間、事務責任者を含め「なぜ問題に気付かなかったのか」という点については納得していないという。
後援会への2千万円の貸し付けについて、大石氏は22年6月に提出した資産等報告書に記載。同7月には貸借契約書を作成し、昨年3月までに返済金を2回受け取った。会計処理を確認する機会はあったが、事務方も「問題ないという認識だった」などと釈明した。
臨時会見で大石氏は問題の原因について、自身の公務多忙による「管理不足」や政治家としての「経験不足」とした。記者から「自分に不利なことは『記憶が曖昧』という言い方をしている印象を受ける」と言われた大石氏はこう返した。「事実関係をできる限り整理し、今回も、これまでも回答している」
大石氏の政治資金問題は昨年6月24日の県議会一般質問が発端だった。その4日後、大石氏は記者団に対し、自身が“被害者”と印象付けるような発言をした。「私の承認なく(後援会から)多額の出金がなされ、監査業務を行った者に渡った可能性がある」。詐欺容疑での刑事告訴も視野に検討を進めていると表明。ただ、詳細は「確認している」と説明を避けた。
その詳細は、約3カ月後の県議会総務委員会集中審査で“暴露”される。「多額の出金」について、参考人の元監査人と元後援会職員は、大石氏が後援会に2千万円を「架空貸し付け」して受け取った返済金計655万円2千円を会計上で打ち消す「スキーム」だったと証言。大石氏の了承を受け、元監査人の会社に約460万円を送金したと主張した。大石氏は否定し、双方の証言は食い違った。
ところが今月中旬、大石氏と元職員の会話とみられる音声動画がインターネット上に流出。約2分の音声動画には次のようなやりとりが記録されていた。
元職員「この会社とコンサル契約を結んで後援会から契約金を100万、330万を2回に分けて振り込む」「契約金を入れて、7日後に(会社から)私の個人口座に振り込んで、10日プールして現金にして知事に渡す。知事はその金を2回に分け、後援会に返還するという流れ」
大石氏「お金の流れはつながっているんじゃないのかって言われても大丈夫になってるんですよね」
元職員「なので私の個人口座に振り込んでもらいます」
大石氏「日数とかがポイントなんでしょうね。2回とか。分かりました」
大石氏は19日の定例会見で音声動画のような会話は昨年6月上旬に「あった」と認めた。その前日には、元監査人と元職員の3人で協議した記憶もあるという。
当時、元監査人から後援会の収支報告書に二重計上の問題があると指摘され、「適正適法な解決方法を助言していただける方だと信じていた」と釈明。二重計上は意図的ではなく、スキームを「理解して了承した事実は全くない」と反論した。
録音の会話が事実であれば、大石氏は「多額の出金」を協議した6月上旬には二重計上の問題を認識していたことになる。大石氏は否定するが、会話のやりとりから、大石氏にも問題を隠蔽(いんぺい)する意図があったのではないかとの疑いが拭い切れない。
一方、会見で記者から「出金を了承していたから刑事告訴できないのではないか」と問われた大石氏は「不正な出金を了承したことはない。告訴をしない理由も、現時点でそういう環境にないからだ」と繰り返した。
「架空の資金移動をでっち上げていない」。臨時会見の冒頭、大石氏はこう否定した。2022年知事選時に県医師信用組合から借りた2千万円は、当初から「どう処理されるのか全く分かっていなかった」と強調。知事選の収支報告書に計上されていると認識しないまま、自らの後援会に貸し付け、政治資金収支報告書に「誤って二重計上した」と改めて主張した。
一方、具体的な経緯は示せなかった。これまで、22年5月ごろに選挙コンサルタントから「後援会への貸し付けは可能」「法令に抵触しない」と助言を受けたと説明。選挙コンサルにも再度確認したが「(経緯は)よく覚えていなかった」とした。
大石氏は「あいまいな記憶」と前置きした上で「コンサルとは懇意にしており、『選挙はお金もかかって大変ですね』という話をした可能性もある。そういったところで(2千万円を)後援会に貸し付けても問題ないと教えてもらったと思う」と述べた。記者から「知事が2千万円を返してもらう方法を聞いたのでは」と問われると、「それはない」と断言した。
「二重計上」の疑いは昨年7月に報道で表面化。県議会は以降、全員協議会や集中審査で真相を探った。参考人の元後援会職員や元監査人は「意図的な架空貸し付け」と証言したが、大石氏は反論して意見が食い違った。選挙コンサルも参考人招致に応じず、議会での解明は行き詰まった。
これを受け自民党県連は2月、大石氏に疑問点を示して自ら説明責任を果たすよう要請。臨時会見で「おおむね回答した」と評価するが、知事選から2年間、事務責任者を含め「なぜ問題に気付かなかったのか」という点については納得していないという。
後援会への2千万円の貸し付けについて、大石氏は22年6月に提出した資産等報告書に記載。同7月には貸借契約書を作成し、昨年3月までに返済金を2回受け取った。会計処理を確認する機会はあったが、事務方も「問題ないという認識だった」などと釈明した。
臨時会見で大石氏は問題の原因について、自身の公務多忙による「管理不足」や政治家としての「経験不足」とした。記者から「自分に不利なことは『記憶が曖昧』という言い方をしている印象を受ける」と言われた大石氏はこう返した。「事実関係をできる限り整理し、今回も、これまでも回答している」
大石氏の政治資金問題は昨年6月24日の県議会一般質問が発端だった。その4日後、大石氏は記者団に対し、自身が“被害者”と印象付けるような発言をした。「私の承認なく(後援会から)多額の出金がなされ、監査業務を行った者に渡った可能性がある」。詐欺容疑での刑事告訴も視野に検討を進めていると表明。ただ、詳細は「確認している」と説明を避けた。
その詳細は、約3カ月後の県議会総務委員会集中審査で“暴露”される。「多額の出金」について、参考人の元監査人と元後援会職員は、大石氏が後援会に2千万円を「架空貸し付け」して受け取った返済金計655万円2千円を会計上で打ち消す「スキーム」だったと証言。大石氏の了承を受け、元監査人の会社に約460万円を送金したと主張した。大石氏は否定し、双方の証言は食い違った。
ところが今月中旬、大石氏と元職員の会話とみられる音声動画がインターネット上に流出。約2分の音声動画には次のようなやりとりが記録されていた。
元職員「この会社とコンサル契約を結んで後援会から契約金を100万、330万を2回に分けて振り込む」「契約金を入れて、7日後に(会社から)私の個人口座に振り込んで、10日プールして現金にして知事に渡す。知事はその金を2回に分け、後援会に返還するという流れ」
大石氏「お金の流れはつながっているんじゃないのかって言われても大丈夫になってるんですよね」
元職員「なので私の個人口座に振り込んでもらいます」
大石氏「日数とかがポイントなんでしょうね。2回とか。分かりました」
大石氏は19日の定例会見で音声動画のような会話は昨年6月上旬に「あった」と認めた。その前日には、元監査人と元職員の3人で協議した記憶もあるという。
当時、元監査人から後援会の収支報告書に二重計上の問題があると指摘され、「適正適法な解決方法を助言していただける方だと信じていた」と釈明。二重計上は意図的ではなく、スキームを「理解して了承した事実は全くない」と反論した。
録音の会話が事実であれば、大石氏は「多額の出金」を協議した6月上旬には二重計上の問題を認識していたことになる。大石氏は否定するが、会話のやりとりから、大石氏にも問題を隠蔽(いんぺい)する意図があったのではないかとの疑いが拭い切れない。
一方、会見で記者から「出金を了承していたから刑事告訴できないのではないか」と問われた大石氏は「不正な出金を了承したことはない。告訴をしない理由も、現時点でそういう環境にないからだ」と繰り返した。