島原マタニティ病院閉院へ 半島最大の産科「少子化が要因の一つ」 長崎県島原市

2025/02/13 [11:02] 公開

7月末で閉院する島原マタニティ病院=長崎県島原市新町2丁目

7月末で閉院する島原マタニティ病院=長崎県島原市新町2丁目

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島原半島に3カ所ある産婦人科の医療機関で最大の「島原マタニティ病院」(長崎県島原市新町2丁目、30床)が、7月末で閉院することが12日までに分かった。3月末で出産への対応を取りやめる。吉田至幸院長は取材に、「少子化が閉院を決断した要因の一つ」と説明した。市は若い世代の定住への影響を懸念。4月以降は半島外の医療機関を利用せざるを得ない妊産婦が増える恐れがある。

 同院は1983年開院。市内外から妊産婦を受け入れてきたが、同院ホームページに10日付で「諸般の事情により3月末で分娩(ぶんべん)の取り扱いを中止することを決断しました」と院長名義で掲載した。同院によると、通院中の妊婦約130人には既に説明し、近隣の産婦人科を紹介している。4月以降、婦人科診療や乳児健診などは継続するが、7月末までに外来診療もやめ、閉院する。
 島原市などによると、市内の産婦人科は2016年度以降「山崎産婦人科医院」(19床)との2カ所だけ。島原半島内には他に南島原市の「いその産婦人科」(12床)がある。
 島原市内での出生数は15年度405人(うち市内出産311人)だったが、昨年度は225人(同163人)とほぼ半減している。古川隆三郎市長は取材に「少子化は全国的な傾向だが、出産を含めた子育て支援環境は、地方では特に若い世代の定住に影響する。県や医師会などにも対応を相談したい」と話した。
 産婦人科医の森崎正幸・県医師会長は「物価高騰などで分娩施設の経営は厳しく、閉院は苦渋の決断だったのだろう」とした上で、島原マタニティ病院の閉院後は島原半島で年間600~650件ある出産のうち、100~150件程度は半島内で対応できないとの見方を示した。「妊産婦に安心してもらえるよう、諫早市や長崎市などの広域で支えていく必要がある」と述べた。