長与の森満工業 インドネシアで人材育成 現地の国立高専と提携、雇用へ 長崎

2024/07/24 [12:18] 公開

合意文書を交わし手を組むインドネシア工業省のマスロカン長官(中央)、バスリ学長(右端)、満﨑社長(右から2人目)ら関係者=長与町岡郷

合意文書を交わし手を組むインドネシア工業省のマスロカン長官(中央)、バスリ学長(右端)、満﨑社長(右から2人目)ら関係者=長与町岡郷

大きい写真を見る
ステンレス配管の加工、溶接などを行う森満工業(西彼長与町)は、自社の高度な技術をインドネシアのマカッサル国立高専の学生に学んでもらい、卒業後に即戦力として同社に受け入れる仕組みづくりを進めている。現地で働きたい人を集める送り出し機関などは介さず、同校と直接提携。同校を管轄するインドネシア政府機関とも合意文書を交わした。お墨付きを得て人材の育成と確保に乗り出した。
 同社の満﨑俊二社長によると、取り組みの目的は人手不足の解消という。同社は社員約120人。発電所や船舶関連などの工事に携わっている。採用の現状については「人が集まらない。だが誰でもいいというわけではなく、しっかり教育を受けた人材が必要」と話す。
 これまで同社が他国から受け入れた技能実習生の場合、来日後の1年は知識と技術の習得に費やす必要があった。満﨑社長は「日本に来てから教育するには時間がかかる。母国で基礎技術と語学を習得してもらえれば」と数年前から考えていた。縁のあったインドネシアでコーディネート会社を通じてスラウェシ島のマカッサル国立高専と出合い、協議を重ねてきた。
 同高専は高校を卒業した学生が進学する3年制の学校で、学生は約8千人。同社と組んだ特別授業を2年生を対象に今年9月に始める予定という。コンピューター利用設計システム(CAD)を使った設計や図面を基にした特殊溶接、日本語、日本文化などを1年間学ぶ。
 受講を終え3年次には、来日して同社で1年間インターンとして就業体験することで単位が取れる。卒業後はビザを取得し同社へ就職できる流れ。同社は年間約30人を受け入れる考え。
 インドネシアは人口約2億8千万人で人口が増え続けている。優秀な学生でも国内雇用の受け皿が不足しているという。今回の合意は、優秀な学生が日本で働ける環境づくりや日本の高い技術力の習得を望むインドネシア側と、同社の思惑が一致した。
 先月、長与町で行われた調印式にはインドネシア工業省産業人材開発庁のマスロカン長官や、同高専のバスリ学長ら関係者が出席。マスロカン長官は「今回の協力関係をきっかけに、工業省が国内で管轄する他の高専や大学にも、この取り組みを広げていきたい」と期待。バスリ学長は「森満工業と提携した国際授業は学生にとって良いチャンス。興味を持っている学生も多い」と語った。