東彼・千綿から循環型“衣”を 「100年紡ぎ」プロジェクト 下野さんと堤さん

2022/01/26 [12:30] 公開

収穫した綿を手にする下野さん(左)と堤さん=東彼杵町中岳郷

収穫した綿を手にする下野さん(左)と堤さん=東彼杵町中岳郷

  • 収穫した綿を手にする下野さん(左)と堤さん=東彼杵町中岳郷
  • 下野さんらが育てた綿花=東彼杵町中岳郷
  • 糸紡ぎワークショップの様子=昨年12月、西海市(下野さん提供)
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 長崎県東彼川棚町の下野惠美子さん(34)と東彼杵町の堤彩子さん(40)の主婦2人が、東彼杵町千綿地区で無肥料、無農薬の綿花を栽培し、収穫した綿から糸を紡ぐプロジェクト「千綿100年紡ぎ」に取り組んでいる。衣服の低価格化、大量消費が当たり前になった今、「100年続くような循環型の“衣”を千綿から発信したい」と話す。
 2人は育児を通じて親しくなったママ友同士。2017年からは、東彼杵町の主婦、飯塚陽子さん(46)と3人で無店舗型の生花店「ミドリブ」を営む。千綿地区の交流拠点「ソリッソリッソ」を中心に、フラワーアレンジメントのワークショップやイベントの装飾などを実施してきた。
 活動を通して、1970年代に千綿地区に紡績工場があったと知った。50年近くが過ぎ、人々のライフスタイルが変化したことで、失われた地場産業。自分たちにできる範囲で“復活”させようと綿花の栽培に乗り出した。

 町内の農家から休耕地を借り、18年4月に初めて種を植えた。夏から秋にかけて花が咲き、コットンボールと呼ばれる綿が付くようになった。一斉に咲かず、苗によって時間差があるため、空いた時間を利用して畑の様子を見に行き、こつこつと収穫。1年の収量は1~2キロ程度という。
 収穫した綿から糸を紡ぐワークショップを昨年12月から県内各地で始めた。長崎市でオリジナルの衣料品製作を手掛ける杉本美咲さんが指導し、綿から種を取ったり、汚れを落としたりした後、実際に糸を紡ぐ作業を体験してもらう。
 「数メートルの糸ができるまでの時間と手間を楽しんでほしい」と下野さん。「手軽に服を買い、着なくなったら捨ててしまう。そんな行動が変化するきっかけになれば」と話す。今後は学校への出前授業などで子どもたちにも服の大切さを伝えたいと考えている。堤さんは「小さな活動だけど続けていくことでいつか『千綿の綿』が有名になるといいね」とほほ笑んだ。
 新型コロナウイルス感染防止のため、今後のワークショップは未定。予定はミドリブのインスタグラムで知らせる。