長崎IRの資金調達 議会で不安の声相次ぐ 事業者「十分確保できる」 県は明言避ける

2021/12/19 [09:39] 公開

高層ホテルやコンベンション施設などを備えた長崎IRの敷地内のイメージ(県提供)

高層ホテルやコンベンション施設などを備えた長崎IRの敷地内のイメージ(県提供)

  • 高層ホテルやコンベンション施設などを備えた長崎IRの敷地内のイメージ(県提供)
  • 長崎IRの資金調達を不安視する意見が出た県議会総務委員会=県庁
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 長崎県と佐世保市がハウステンボス(HTB)への誘致を目指す、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を巡り、総事業費3500億円の資金調達や出資企業の確保を不安視する声が出ている。開会中の県議会では、議員が見通しをただす場面が相次いだが、県は「企業の機微に関わる」として明言せず、疑念を残した。一方、IRを手掛ける事業予定者は「十分確保できる」と主張する。
 「資金面は非常に重要だ。(出資企業は)決まっているのか」。3日の県議会一般質問。浅田眞澄美議員(自民・県民会議)は何度も疑問をぶつけたが、県幹部は「(事業予定者が)調整を続けている」と言及を避け続けた。IRを議論する委員会でも同様の質問が噴出したが、堂々巡りが続いた。

 県は今夏、IRの設置運営事業予定者にオーストリア国有企業傘下の「カジノオーストリアインターナショナルジャパン」(CAIJ)のグループを選定。CAIJが開業に向けた総事業費の調達や出資企業の確保を担い、運営主体のコンソーシアム(共同事業体)の編成を進めている。
 一方、県は今定例会までにIR区域整備計画素案の作成状況を議員に随時報告するとしていた。だが、素案の提示は会期中となり、出資内容は明記されなかった。こうした対応も一部議員の不信感を招いた。
 CAIJは当初、総事業費を2000億円程度と試算していたが、政府が「かつてないスケール」を求める中で、3500億円まで上乗せした経緯がある。地元経済界からも「新型コロナウイルス禍で資金集めが難航しているのではないか」と危惧する声がある。
 こうした見方に対し、CAIJの林明男代表は取材に「資金は十分確保できる見通しがある」と強調する。総事業費は出資金と金融機関からの借入金を半分ずつ充てる方針。コンソーシアムは50社程度で構成し、「オーストリア側」「九州・長崎」「首都圏」から3割程度ずつ参加してもらう構想を描く。ただ、「IRへの参加は企業の経営戦略や株価を大きく左右する」とし、「出資企業の強い意向もあり、社名などは現段階で公表できない」と理解を求める。
 関係者によると、「水面下では“追い風”も吹いている」。IR誘致を表明していた横浜市が9月に撤回し、「横浜で参入を目指した有力企業がこぞって長崎へシフトした」。こうした企業を含め、CAIJはメガバンクや大手ゼネコン、商社、旅行会社などと最終調整を進めているという。
 県は、来年最初の定例県議会に出資内容を含めた区域整備計画案を議案として提出。4月までに国へ区域認定を申請する。県IR推進課は「資金調達は事業予定者がしっかり対応すると考えている。時期がくれば出資企業も明らかになる」としている。