どれもこれもが「切った張った」というような物騒な案件とは限らないが、裁判所は、こじれにこじれて当事者同士の話し合いでは決着がつかない争い事が持ち込まれる場所だ。多くの市民にとって、裁判の当事者になるのは一生に一度あるかないかの“大ごと”▲だから、その裁定役である裁判官には、できる限り個々の事案に丁寧に向き合ってほしいと思うし、考えに考えて、時には悩み抜いて結論を出してほしい、と願うのだが、現実はそうでもないらしい▲生活保護費の基準額引き下げの取り消しを求めて29都道府県で起こされた集団訴訟で、原告の請求を退けた3地裁の判決文に同じ誤字があったという。よその判決文をそのまま引き写した「コピー&ペースト」が疑われている▲類似訴訟に対する先行判断が踏襲されることは当然あり得る。それでも、どこかの判決をパソコンの画面に開いて“切ったり貼ったり”する姿は想像するだけで真剣味を疑う▲見つかったのは「NHKジュシンリョウ」を「受診料」としたミスだ。受信料。こんなお粗末な中身でなければコピペ疑惑自体、表面化しなかった可能性がある。他にはない、とも言い切れない▲ただ、考える。雑な仕事は必ず露見するようにできているのかもしれない-天網恢々(てんもうかいかい)疎にして漏らさず。(智)
切ったはった…?
長崎新聞 2021/12/18 [11:00] 公開